2021 Global Outlook
SEPTEMBER 2021 GLOBAL OUTLOOK

リスク選好を維持する理由

長く上昇が続いた後で、リスク資産が一段上昇する道は狭まっているように見えますが、ブラックロックは、世界的な経済活動再開の広がりと実質金利のマイナス継続を理由に、戦術的なリスク選好のスタンスを維持します。

投資テーマ

01

ニューノミナル

力強い経済活動の再開が広がり、欧州をはじめとする主要国は米国に追いつきつつあります。 中期的にインフレ率は上昇するものの、それに対する金融政策はこれまでに比べて控えめになると予想します。

戦術へのインプリケーション:欧州株式と物価連動国債を引き続きオーバーウエイトとし、新興国債券(現地通貨建)をオーバーウエイトに引き上げます。

02

一線を画す中国

中国は経済成長率が鈍化し始める中で、比較的引き締めの政策スタンスを取っています。支配的企業に対する規制当局の監視が続いています。これは成長の質の改善を目指す中国の取り組みの重要な側面とみられます。

戦術へのインプリケーション:中国の株式についてややポジティブなスタンスに転じ、中国債券を引き続きオーバーウェイトとします。

03

ネットゼロへの道のり

炭素排出ネットゼロに至るロードマップは描かれておらず、市場はやがて到来する大きな変化を過小評価しているとみられます。その行程が平坦な道のりとなる可能性は低く、それが幅広い分野に投資機会を創出するとみています。

戦術へのインプリケーション:グリーン経済への移行を活かす有利な位置づけにあると考え、テクノロジー・セクターをオーバーウェイトとします。

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狭き道

中国の規制強化や米連邦準備理事会(FRB)による資産購入の縮小が注目される中、市場は不安定な状況にあります。ブラックロックは、これまでの長期にわたる上昇の後で、リスク資産のさらなる上昇の道は狭まっており、選択的なアプローチが必要であると考えていますが、戦術的にはリスク選好のスタンスを再確認しています。中国の資産に対するお客様のアロケーションの割合が非常に少ない状況をふまえて、この資産クラスに足を踏み入れ、ややオーバーウェイトに見方を変更しています。

ニューノミナルが強まる

ニューノミナルが示されている
米国の政策金利の経路vs過去のサイクル

ニューノミナルが示されている

将来の予測は実現しない可能性があります。出所:BII、FRB、データはRefinitiv Datastream 、2021年9月時点。注記: 赤の点は、連邦公開市場委員会(FOMC)が公表するFFレート予想の中央値を示す。各線は1994年以降の過去の利上げサイクルと、米国の金利のパスに関するブラックロックの予想を示している。この経路は、最初の利上げが行われた時点(四半期)を基準にして示されている。FRBの予想の中央値は、2021年9月のSummary of Economic Projections(SEP)から得られたものである。SEPの予測はFFレートの年末の予測のみを示しているため、連続した線ではなくドットを示すことでその不確実性を反映している。ブラックロックは、FRBが次回の利上げサイクルを2023年前半に開始するとみている。

FRB は、2021年末にテーパリングを開始する準備をしていることを示唆しています。FRBはインフレ目標の達成を認めたがらないようであり、これはニューノミナルの投資テーマを裏付けるものと考えます。つまり、中央銀行がインフレ上昇に対して従来よりも穏やかな反応を示すことは、リスク資産にとってプラスということです。過去の利上げサイクルとブラックロックの予想は、グラフをご覧ください。中国株について、規制強化の影響による下落リスクが継続しているものの、戦術的見通しを、年央の中立から小幅なオーバーウェイトに変更しています。この判断の背景には、金融、財政、規制という3つの政策手段を用いて、短期的には段階的な緩和が行われると考えているためです。経済成長の鈍化は、政策当局にとって無視できないレベルに達していると思われるからです。10-12月期の成長率は、1-3月期の18%から3%台に低下する可能性が高いと見ています。当社は、大規模な株価の再評価(中国株は年初来、米国株を30ポイント以上アンダーパフォーム)や、中国株の株式リスク・プレミ アムの上昇が、特に今後6~12ヶ月のスパンで見ると行き過ぎであると考えています。現在のバリュエーションでは、投資はリスクに見合っていると考えていますが、その中でもクオリティ・バイアスを重視しています。

選択的リスク選好

中国に対するブラックロックの戦略的見通しでは、中国が国家による関与を強め、社会的・政治的な目標が経済的な目標よりも優先される方向に進んでいることを考慮し、結果として、リスクが高まり、新たな投資レンズが必要になると見越しています。しかし、背景が非常に重要です。ブラックロックの中国資産へのアロケーションは、先進国市場の資産へのアロケーションよりも桁違いに低い水準にとどまっています。現在中国へのアロケーションが非常に小さいことを正当化することは、中国市場の重要性が増しているにもかかわらず、この市場が本質的に投資不可能になるという見方に立っていることを示唆しています。

また、新興国市場(EM)の現地通貨建債券をややオーバーウェイトに引き上げています。実質利回りが高く、対外収支が改善していることから、FRBのテーパリングがEMの混乱につながるとは考えていません。EMの現地通貨建て債券は、利回りが枯渇している世界において、魅力的なバリュエーションとクーポン収入を提供しているとみています。米国債同様大幅なアンダーウエイトとしているEMのドル建て債券と比較してデュレーションが低く、現地のイールドカーブがスティープで、魅力的なタームプレミアムが得られることから、EMの現地通貨建て債券を選好しています。

加えて、新興国の多くでは、引き締めサイクル初期を終えたと考えており、このこともEMの現地通貨建て債券を下支えしています。この2資産についての僅かに見通しを引き上げたのは、ブラックロックが戦術的にリスクをより選好するようになったわけではありません。実際のとこころ、リスク資産が上昇する可能性は狭まっていると考えており、リスク資産の長期的な上昇の後には市場が過剰反応を起こしやすいため、途中でボラティリティが高まる可能性もあります。しかし、6-12ヶ月の期間では、経済活動再開の拡大とニューノミナルの状況が、リスク資産を支えると考えています。

また、欧州が引き続き経済活動再開の恩恵を受けると考え、欧州株のオーバーウェイトを継続します。米国債については引き続きアンダーウェイトとします。FRBが11月にテーパリング計画を発表する準備をしているものの、利回りは緩やかなペースで上昇すると考えているためで、ポートフォリオでデュレーションのエクスポージャーをとる場合には、名目債よりもインフレ連動債を選好します。また、グローバルな投資適格社債については、利回りがさらに低下する余地はほぼないとみており、アンダーウエイトとします。この見通しを基に投資する方法は、投資家のタイプや地域、目標や制約、規制に応じて異なります。

リスク選好を継続

各国で経済再開が進み、世界の中央銀行が金融政策の緩和的スタンスを維持すると決定したことで、ブラックロックは緩やかなリスク選好姿勢を継続します。ブラックロックは戦略的にも戦術的にもクレジットや国債より株式を選好します。

各資産クラスの見通し

幅広い資産クラスに関する戦略的(長期)ならびに戦術的(6~12カ月)見通し:2021年10月

資産 戦略的見通し 戦術的見通し コメント
株式 Equities: strategic Overweight +1 Equities: tactical Overweight +1 戦略的見地からは株式のオーバーウェイトを維持します。バリュエーションが落ち着く中、利益見通しの改善が見込まれます。ベンチマーク指数におけるテクノロジーやヘルスケア企業などのセクターのウェイトが大きいことから、リターン予測に気候変動を組み込むことで先進国市場の株式の魅力が高まります。戦術的にも株式の見通しをオーバーウェイトに維持します。経済活動再開の動きにはずみがつく一方、低金利が続くとみられるためです。景気敏感株を選好し、クオリティ重視の姿勢を維持します。
クレジット Credit: strategic Underweight -1 Credit: tactical Neutral バリュエーションが高水準にあり、また株式の選好を維持するため、戦略的観点からクレジットのアンダーウェイトを維持します。戦術的ホライズンでは、投資適格債とハイイールド債のスプレッドの縮小を受けて、クレジットの見通しを中立とします。
国債 Government bonds: strategic Underweight -1 Government bonds: tactical Neutral 戦略的には国債の見通しをアンダーウェイトにします。国債の利回りが下限に近づいており、ポートフォリオの安定化手段としての機能が低下しているからです。債務の増大は、低金利環境ではリスクとなる恐れがあります。こうしたリスクも戦略的に国債の見通しをアンダーウェイトにする理由の1つです。物価連動債を選好しており、特に、バリュエーションの観点からユーロ圏より米国の物価連動債を選好します。米国債の見通しは、利回りが徐々に上昇すると思われることからアンダーウェイトを一段階引き下げます。
キャッシュ - Private markets: strategic Neutral 適度なリスク選好を維持し、市場の混乱時にリスク資産をさらに積み増す可能性に備えて一定のキャッシュを保有します。
プライベート市場 Private markets: strategic Neutral - プライベート・クレジットを含む非伝統的な資産のリターンの源泉には価値を向上させる可能性や分散効果が見込まれます。中立の見通しは、大半の投資家が保有しているよりも大幅に高い配分をベースとしています。機関投資家の多くは流動性リスクを過大視し、プライベート市場への投資を過度に抑えているとみられます。プライベート市場は複雑な資産クラスであり、すべての投資家に適した投資対象ではありません。

注記:上記の見通しは米ドルベースです。2021年9月時点。当資料は特定の時点における市場環境の評価を示すものであり、将来の出来事の予想または将来の成果の保証を意図したものではありません。読者は当資料中の情報を、特定のファンド、戦略あるいは証券に関するリサーチまたは投資アドバイスとして依拠すべきではありません。

本見通しでは広範な資産クラスと比較した個々の資産のパフォーマンスについて、ブラックロックがどのように考えているかを示しています。確信度は異なります。

各資産の戦術的見通し

各資産クラスの6~12カ月の戦術的見通しと確信の度合いに基づく世界の資産クラス全体に対する見方:2021年10月

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資産 見通し コメント
株式
米国 United States: tactical Neutral 米国株式の見通しを中立とします。経済再開の動きが他国(特に欧州および日本)にも広がりを見せていることから、米国の経済成長の勢いはピークに達しつつあると考えており、他国が経済再開の次の局面において魅力的な役割を果たすと予想します。
米国小型株 U.S. small caps: tactical Overweight +1 米国小型株の見通しはオーバーウェイトを維持します。米国株式の中で小型株は、ワクチン接種の加速による国内経済の回復により恩恵を受ける可能性があると考えます。
欧州 Europe: tactical Overweight +1 欧州株式の見通しについては、経済活動の再開が広がりつつあることから、オーバーウェイトに引き上げます。経済活動はワクチン接種の加速によりかなり活発化しています。バリュエーションは過去と比べ依然魅力的な水準にあり、欧州への投資家の資金流入は増加し始めたばかりです。
英国 U.K.: tactical Neutral 英国株式の見通しについては、市場が大きく上昇したため中立に戻します。英国株式のバリュエーションは上昇余地が乏しいとみており、欧州株式を選好します。
日本 Japan: tactical Neutral 日本株式の見通しを中立に引き上げます。世界景気の回復により2021年後半の企業収益は改善するとみられます。日本の新型コロナウイルスの感染状況も改善しつつあります。
中国 China: tactical Overweight + 1 景気の減速に対応して金融・財政政策が徐々にハト派的に変化し、また、規制による締め付けが弱まるとみて、中国株に対してややポジティブな見通しに変更します。
新興国 Emerging markets: tactical Neutral 新興国株式の見通しを中立に引き下げます。FRBのコミュニケーションを元にリスクプレミアムが上乗せされるおそれがあり、米ドルの見通しに不確実性が増大しています。新興国の多くが引き締め政策を開始したことは、政策の支援が後退し経済が打撃を受けるリスクの高まりを示唆していると考えます。
日本を除くアジア Asia ex-Japan: tactical Neutral 日本を除いたアジア株式の見通しを中立に引き下げます。ウェイトが高い中国のテクノロジー・セクターへの独占禁止法による取り締まりや地政学リスクの拡大が見通しに影響しています。
債券
米国債 U.S. Treasuries: tactical Underweight -2 物価連動国債の見通しをオーバーウェイトに引き上げます。直近の価格の下落はエクスポージャーを追加する好機と考えます。特に、ユーロ圏のインフレ見通しは依然低い水準にあるため、欧州より米国の物価連動国債を選好します。
米物価連動国債 Treasury Inflation-Protected Securities: tactical Overweight +1 物価連動国債の見通しをオーバーウェイトに引き上げます。直近の価格の下落はエクスポージャーを追加する好機と考えます。特に、ユーロ圏のインフレ見通しは依然低い水準にあるため、欧州より米国の物価連動国債を選好します。
ドイツ国債 German Bunds: tactical Neutral ドイツ国債の見通しを中立とします。インフレの動向を考えると欧州中央銀行(ECB)が年内に量的緩和の縮小を開始する可能性がありますが、大幅な政策変更の余地は短期的にはあまりないと考えます。
ユーロ圏周縁国債 Euro area peripherals: tactical Neutral ECBの政策の安定性、周縁国における低ボラティリティおよびその他の国でのバリュエーションの上昇から、ユーロ圏周縁国の国債の見通しについては、最近のアウトパフォームにかかわらず中立とします。
中国国債 China government bonds: tactical Overweight +1 中国国債に対する見通しはオーバーウェイトとします。比較的安定した金利とキャリーの水準が中国国債の魅力を高めていると考えます。
グローバル投資適格債 Global investment grade: tactical Underweight -1 投資適格債をアンダーウェイトに維持します。イールド・スプレッドがさらに縮小する余地はほとんどないとみており、アジア債券といった景気敏感資産への投資をより選好します。
グローバル・ハイイールド債 Global high yield: tactical Neutral ハイイールド債の見通しについては、この市場が大きく上昇したため中立に引き下げます。現在のスプレッドは、魅力的とされる水準を下回っているとみており、株式を選好します。
新興国債券(ドル建て) Emerging market - hard currency: tactical Neutral ドル建て新興国債券の見通しを中立とします。ワクチン普及に伴う世界の経済活動の再開や米国の通商政策をめぐる予測可能性の高まりが下支えするとみられます。
新興国債券(現地通貨建て) Emerging market - local currency: tactical Neutral 現地通貨建ての新興国債券をオーバーウェイトとします。この資産クラスは、魅力的なバリュエーションとインカムを渇望する世界でのキャリーを提供するとみています。
アジア債券 Asia fixed income: tactical Overweight +1 アジア債券の見通しをオーバーウェイトとします。バリュエーションは魅力的な水準です。アジア諸国は新型コロナウイルスの封じ込めで大きな成果を上げており、経済活動再開で先行しています。

過去のパフォーマンスは現在または将来の成果を示唆する信頼できる指標ではありません。指数に直接投資することはできません。注記:当資料は特定の時点における市場環境の評価を示すものであり、将来の成果の予想あるいは保証を意図したものではありません。当資料中の情報は、特定のファンド、戦略あるいは証券に関する投資アドバイスとして依拠すべきものではありません。

想定される様々な帰結

世界金融危機(GFC)後の回復と比較すると、現在は大きく異なる状況にあると考えます。前例のない大規模な財政刺激策と革新的な金融政策という政策の変革により、GFC後のような10年にわたる株式と債券の強気市場が再来する可能性は小さいでしょう。ブラックロックはニューノミナルを基本シナリオとみています。

グラフは、現在の仮想のマクロ経済および政策の結果をGFC後の低迷する結果と比較したものです。上記は2021年7月時点における株式と国債への影響に関するブラックロックの見通しを示しています。

出所:BlackRock Investment Institute、2021年7月。注記:グラフは、現在の仮想のマクロ経済および政策の結果をGFC後の低迷する結果と比較したものです。上記は2021年7月時点における株式と国債への影響に関するブラックロックの見通しを示しています。上記は例示のみを目的としています。上記の予想が実現することを保証するものではありません。

FRBはインフレ目標をほぼ達成、ECBは達成できず

ここ数ヶ月のインフレ関連データの上昇により、米国のインフレ率は過去の目標未達を補うことができ、一方ECBは、新しい対称的な2%のインフレ目標を達成するにはまだ遠いように思われます。

FRBはインフレ目標をほぼ達成、ECBは達成できず

将来の予測は実現しない可能性があります。出所:BII、Bureau of Economic Analysis、Eurostat、Federal Reserve、ECB。2021年9月。注記:FRBの予測は、2021年10-12月期から2023年10-12月期のFOMC Summary of Economic Projectionsで発表された10-12月期の年間インフレ率を示している。ECBの予測は、2021-23年の暦年平均のインフレ率を示している。

執筆者
Philipp Hildebrand
ブラックロック副会長
Jean Boivin
BII ヘッド
Wei Li
BII グローバルチーフ投資ストラテジスト
Elga Bartsch
BII マクロリサーチヘッド
Vivek Paul
BII シニア ポートフォリオ ストラテジスト
Scott Thiel
BII チーフ債券ストラテジスト

 

重要事項
当レポートの記載内容は、ブラックロック・グループ(以下、ブラックロック)が作成した英語版レポートを、ブラックロック・ジャパン株式会社(以下、弊社)が翻訳・編集したものです。また当資料でご紹介する各資産の見通し(米ドル建て)は、米国人投資家などおもに米ドル建てで投資を行う投資家のための見通しとしてブラックロック・グループが作成したものであり、本邦投資家など日本円建てで投資を行う投資家の皆様を対象とした見通しではありません。 記載内容は、米ドル建て投資家を対象とした市場見通しの一例として、あくまでご参考情報としてご紹介することを目的とするものであり、特定の金融商品取引の勧誘を目的とするものではなく、また本邦投資家の皆様の知識、経験、リスク許容度、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的等を勘案したものではありません。記載内容はブラックロック及び弊社が信頼できると判断した資料・データ等により作成しましたが、その正確性および完全性について保証するものではありません。各種情報は過去のもの又は見通しであり、今後の運用成果を保証するものではなく、本情報を利用したことによって生じた損失等についてブラックロック及び弊社はその責任を負うものではありません。記載内容の市況や見通しは作成日現在のブラックロックの見解であり、今後の経済動向や市場環境の変化、あるいは金融取引手法の多様化に伴う変化に対応し予告なく変更される可能性があります。またブラックロックの見解、あるいはブラックロックが設定・運用するファンドにおける投資判断と必ずしも一致するものではありません。

MKTGH1121A/S-1902932