2021 Global Outlook
APRIL 2021 GLOBAL OUTLOOK

力強い活動の再開

強力な経済活動の再開が進行しており、インフレ期待が大幅に上昇する一方で、名目利回りの上昇がより緩やかになるなど、ブラックロックが掲げたニューノミナルのテーマが展開されています。こうした背景から、当社はリスク選好のスタンスを再確認し、戦術的な見通しを精緻化しました。

投資テーマ

01

ニューノミナル

景気が回復しインフレ率が上昇する局面での国債利回りが上昇した場合には、中央銀行が急激な金利上昇を容認しない姿勢をとっているため、過去と比較して上昇は抑えられたものになるとブラックロックはみています。

戦略へのインプリケーション:中期的にインフレ圧力が高まる中、国債をアンダーウェイトとします。

02

グローバル化の再構築

新型コロナウイルスは、米中二極化の世界秩序や世界のサプライチェーンの再構築といった地政学的変化を加速させています。

戦略へのインプリケーション:地域を慎重に分散をすることを推奨し、ベンチマークを上回る中国の資産のエクスポージャーを選好します。

03

急加速する構造転換

パンデミックは、サステナビリティ重視、国内や国をまたいだ人種不平等拡大、従来の実店舗型小売店に対するeコマースの優位など、既存の構造的なトレンドを加速させています。

戦略へのインプリケーション:サステナビリティに対する社会の選好の高まりを理由にサステナブル資産を選好します。

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積み上がった需要が再開を後押し

今、私たちは市場において不確実な時期を迎えています。投資家は、異例の成長ダイナミクスと中央銀行の新しい枠組みをどのように解釈すべきか悩んでいます。第一に、米国の経済活動は、所得階層を跨いで積み上がった潜在的な需要と非常に高水準の余剰貯蓄に支えられて、今年、力強く再開すると思われます。下のグラフが示すように、経済成長の予測は追いついてきていますが、再開の力強さはまだ十分に織り込まれていないかもしれません。

金融危機時と新型コロナウイルスショック時の米国の年率GDPとFRBの経済予測

将来の予測は実現しない可能性があります。
出所:BII、FRB、Haver Analytics社のデータ、2021年4月。図表は、米国のGDPの水準を示したものである。世界金融危機と新型コロナウィルスショックについて、米国のGDPの水準と時間の経過に伴うGDPの推計値を示している。ともに、ショック直前の年、2007年と2019年をそれぞれ100としている。推計値は、Reuters Newsのコンセンサス集計もしくはFRBの経済予測を使用。

これは、世界金融危機後に見られた成長に対する度重なる失望とは全く対照的であり、今回のショックの性質の違いを反映しています。私たちは、今回のショックは、通常のビジネスサイクルにおける景気後退後にみられる「回復」というよりも、自然災害後の急速な「再開」に近いものだと考えています。

だからこそ、1年前に私たちは、活動が急減したことをもって過度に推測することに警告を発したのです。今も同様のことが起きていますが、反対の方向の動きです。米国の成長は夏にピークを迎えると思われますが、目を見張るようなデータは一過性のものとなるでしょう。米国に続き、世界の他の国・地域でもワクチン接種のペースが上がってきており、再開が期待されています。

ニューノミナルのテーマが展開されている

 投資家が直面している2つ目のダイナミクスは、新しい中央銀行の枠組みです。ブラックロックがテーマとして掲げた「ニューノミナル」は、この環境を乗り切る一助となると考えます。米連邦準備理事会(FRB)は、新しい枠組みに対する信頼性を高めており、たとえ実現インフレ率が上昇しても、緩和的な政策スタンスを変更するには高いハードルを設定しています。

このことは、市場ではまだ十分に理解されていないと考えています。市場は、中期的に目標以上のインフレ率を達成する可能性をまだ過小評価していると考えられます。これが、利回りが上昇すると考えている理由です。しかし、全体としての調節は、成長ダイナミクスに基づいて過去に予想されていたよりもはるかに緩やかなものになるでしょうし、すでに多くの調節が行われています。

緩和的な金融政策により米国経済が過熱気味に推移しているため、中期的にはインフレ率が安定的に上昇すると予想しています。長期債の名目利回りは上昇していますが、ブレーク・イーブン・インフレ率に反映されている期待インフレ率よりも低いため、実質利回りはマイナスのままであり、リスク資産にとってはプラスである。

 

引き続きリスクをやや選好

再開の動きが広がっていることと、これが大幅な金利上昇にはつながらないと考えていることが、ブラックロックのリスク選好のスタンスを支えています。戦術的には株式をオーバーウェイト、クレジットをニュートラル、国債をアンダーウェイトとしています。しかし、市場価格が大きく変動したため、一部の戦術的見通しを変更しました。詳細は「資産別見通し」タブをご覧ください。

2021 Outlook レポートを読む(PDF)

以下の「各資産の見通し(米ドル建て)」は、米国人投資家などおもに米ドル建てで投資を行う投資家のための見通しとしてブラックロック・グループが作成したものであり、本邦投資家など日本円建てで投資を行う投資家の皆様を対象とした見通しではありません。当該見通しは米ドル建て投資家による各資産の見通しの一例として、あくまでご参考情報としてご紹介することを目的とするものであり、特定の金融商品取引の勧誘を目的とするものではなく、また本邦投資家の皆様の知識、経験、リスク許容度、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的等を勘案したものではありません。記載内容はブラックロック及び弊社が信頼できると判断した資料・データ等により作成しましたが、その正確性および完全性について保証するものではありません。各種情報は過去のもの又は見通しであり、今後の運用成果を保証するものではなく、本情報を利用したことによって生じた損失等についてブラックロック及び弊社はその責任を負うものではありません。記載内容の市況や見通しは作成日現在のブラックロックの見解であり、今後の経済動向や市場環境の変化、あるいは金融取引手法の多様化に伴う変化に対応し予告なく変更される可能性があります。またブラックロックの見解、あるいはブラックロックが設定・運用するファンドにおける投資判断と必ずしも一致するものではありません。

市場見通し

幅広い資産クラスに関する戦略的(長期)ならびに戦術的(6~12カ月)見通し:2021年4月

資産 戦略的見通し 戦術的見通し
株式 Strategic equities - neutral Tactical view - neutral
戦略的ホライズンでは株式の見通しをオーバーウェイトとします。バリュエーションは割安で、収益見通しは改善するとみています。ベンチマーク指数はテクノロジーやヘルスケア・セクターの比重が高いことから、気候変動への取り組みを期待リターンに組み込むことで、先進国株式の魅力は高まる可能性があります。戦術的には株式の見通しを引き続きオーバーウェイトとします。経済活動再開の動きにはずみがつく一方、低金利が続くとみられるためです。景気敏感銘柄を選好し、クオリティの特性重視の姿勢を維持します。
クレジット Strategic equities - neutral Tactical view - neutral
戦略的観点から、バリュエーションが割高となっているクレジットの見通しをアンダーウェイトとし、株式でのリスクテイクを選好します。戦術的ホライズンでは、クレジットの見通しを中立とします。特に投資適格債を中心にスプレッドが縮小していますが、インカム収入に着目し、引き続きハイイールド債を選好します。
国債 Tactical view - neutral Tactical view - neutral
利回りが下限に近づく中、ポートフォリオ安定化の手段としての国債の機能は弱まっており、債務の増大がいずれ低金利環境にリスクをもたらす可能性があることから、戦略的に国債の見通しをアンダーウェイトとします。これは、ブラックロックが戦略的に国債をアンダーウェイトとしている理由の1つです。中期的なインフレ高進のリスクを想定しており、物価連動債を選好します。戦術的スタンスでは、デュレーションをアンダーウェイトとします。経済活動の再開に伴って名目金利が徐々に上昇すると予想されるためです。
キャッシュ Tactical view - neutral Tactical view - neutral
オーバーウェイトとした株式への投資にキャッシュを活用します。一定のキャッシュ保有は有効と考えています。サプライ面でのショックで株式と債券がともに下落した際の緩衝材になるからです。
プライベート市場 Strategic equities - neutral Tactical view - neutral
プライベート・クレジットを含む非伝統的な資産のリターンの源泉には価値を向上させる可能性や分散化効果があると考えています。中立の見通しは、大半の適格投資家が保有しているよりも大幅に高い配分をベースとしています。機関投資家の多くは流動性リスクを過大視し、プライベート市場への投資を過度に抑えているとみられます。プライベート市場は複雑な資産クラスであり、すべての投資家に適した投資対象ではありません。

注記:上記の見通しは米ドルベースです。2021年4月時点。当資料は特定の時点における市場環境の評価を示すものであり、将来の出来事の予想または将来の成果の保証を意図したものではありません。読者は当資料中の情報を、特定のファンド、戦略あるいは証券に関するリサーチまたは投資アドバイスとして依拠すべきではありません。

各資産の戦術的見通し(株式)

各資産クラスの6~12カ月の戦術的見通しと確信度に基づく世界の資産クラス全体に対する見方:2021年4月

Legend Granular

資産 戦術的見通し
米国 United States
米国株式の見通しをオーバーウェイトとします。テクノロジーやヘルスケアなどのセクターが構造的な成長トレンドのエクスポージャーを提供し、米国小型株は2021年に予想される景気サイクルの拡大局面入りの恩恵を享受できる位置付けにあると考えます。
ユーロ圏
Europe
欧州株式の見通しを中立とします。経済活動の再開が本格化するにつれ、欧州以外の株式とのバリュエーション・ギャップが縮小する余地があると考えます。
日本
Japan
日本株式の見通しをアンダーウェイトとします。他のアジア諸国の方が米バイデン政権下での通商政策を巡る予測可能性の高まりに伴う恩恵が大きいかもしれません。米ドル安が円高をもたらし、日本の輸出企業の重しになる可能性もあります。
新興国 Emerging markets
新興国株式の見通しをオーバーウェイトとします。ワクチン普及に伴う2021年の世界経済拡大の恩恵が最も大きいとみられます。米ドルが横ばいまたは下落すると予想されることやバイデン政権下でのより安定した通商政策などもポジティブな要因です。
日本を除くアジア Asia ex-Japan
日本を除いたアジア株式の見通しをオーバーウェイトとします。多くのアジア諸国は新型コロナウイルスを効果的に封じ込め、経済活動の再スタートで先行しています。テクノロジーへの傾斜で構造的な成長トレンドの恩恵を受けることも可能とみています。
英国 Asia ex-Japan
英国株式の見通しをオーバーウェイトとします。ブレグジットの交渉を巡る不透明感が払拭されれば、交渉結果に伴う英国資産のリスクプレミアムは低下するとみています。また英国の大型株は他の地域の大型株をアンダーパフォームしており、世界経済の回復局面で相対的に魅力があると考えます。
モメンタム Momentum
モメンタムファクターの見通しを中立に維持します。同ファクターは短期的に課題に直面するとみられます。新型コロナウイルス感染の再拡大や財政政策による支援息切れのリスクが市場の変動をもたらす可能性があります。
バリュー
Value
最近のアンダーパフォーマンスにかかわらず、バリューファクターの見通しを中立とします。同ファクターは、経済活動再開の加速に伴う恩恵を受ける可能性がありますが、セクターにかかわらずきわめて割安な水準に放置された銘柄の多くは、構造的な課題に直面するとみられます。
ミニマム・ボラティリティ Minimum volatility
ミニマム・ボラティリティのファクターの見通しを中立とします。選好する地域やセクターに同ファクターのエクスポージャーがより高めの割合で含まれています。同ファクターのパフォーマンスが劣後し、バリュエーションが妥当な水準になったとみています。
クオリティ
Quality
クオリティファクターの見通しをオーバーウェイトとします。構造的な追い風を受けているテクノロジー企業を選好します。健全なバランスシートとキャッシュフロー創出力を有する企業には、パンデミックや経済のさまざまな状況への耐性が備わっているとみています。
サイズ
Size
米国のサイズファクターの見通しをオーバーウェイトとします。米国の小型株と中型株はワクチン普及に伴う経済回復の恩恵を受ける可能性がある景気敏感のエクスポージャーを取ることができる主要な資産と考えられます。

過去のパフォーマンスは現在または将来の成果を示唆する信頼できる指標ではありません。指数に直接投資することはできません。
注記:上記の見通しは米ドルベースです。当資料は特定の時点における市場環境の評価を示すものであり、将来の成果の予想あるいは保証を意図したものではありません。当資料中の情報は、特定のファンド、戦略あるいは証券に関する投資アドバイスとして依拠すべきものではありません。

各資産の戦術的見通し(債券)

各資産クラスの6~12カ月の戦術的見通しと確信度に基づく世界の資産クラス全体に対する見方:2021年4月

Legend Granular

資産 戦術的見通し
米国債 United States
米国債の見通しのアンダーウェイトを一段引き上げます。経済活動の再開が加速し、それに対する反応として利回りが大きく上昇したためです。短期金利はゼロ近辺に張り付くとみており、引き続きアンダーウエイトとします。
米物価連動国債
Europe
昨年終盤からのインフレ期待の急速な高まりを背景に物価連動債の見通しを中立とします。一段の上昇は短期的にはないとみています。中期的には引き続き、製造コストの上昇のような構造的な要因や、中央銀行のインフレ上昇に辛抱強く対処するスタンスを背景に、インフレ圧力が高まる可能性があると考えます。
ドイツ国債
Japan
ドイツ国債の見通しを中立とします。ユーロ圏の景気回復が減速の兆候を示す中、欧州中央銀行による追加的金融緩和を好感し、リスクが後退するとみています。
ユーロ圏周縁国債 Emerging markets
ユーロ圏周縁国の国債の見通しを中立とします。利回りは過去最低の水準に近づき、スプレッドは縮小しています。欧州中央銀行は市場を支えていますが、価格の影響を受けないわけではなく、スプレッドの縮小に伴い資産買い入れを縮小しています。
グローバル投資適格債 Asia ex-Japan
投資適格債の見通しをアンダーウェイトとします。イールド・スプレッドがさらに縮小する余地はほとんどないとみており、ハイイールド債やアジア債券といった景気敏感の資産への投資をより選好します。
グローバル・ハイイールド債 Momentum
グローバル・ハイイールド債はややオーバーウェイトとします。スプレッドは大幅に縮小しましたが、同資産クラスは低金利の環境で依然、魅力的なインカムの源泉と考えています。
新興国債券(ドル建て) Value
ドル建て新興国債券の見通しを中立とします。ワクチン普及に伴う世界の経済活動の再スタートや米国の通商政策を巡る予見性の高まりが下支えするとみられます。
新興国債券(現地通貨建て) Minimum volatility
現地通貨建て新興国債券の見通しをオーバーウエイトに引き上げます。年初来のパフォーマンス低迷により、バリュエーションが魅力的な水準になるとみています。特に米国債の利回りと米ドルの水準が安定している場合に当てはまります。一部の国・地域固有の要因によるボラティリティの高まりは、他に広がることはないと考えます。
アジア債券
Quality
アジア債券の見通しをオーバーウェイトとします。バリュエーションは魅力的な水準です。アジア諸国は新型コロナウイルスの封じ込めで大きな成果を上げており、経済活動再開で先行しています。

過去のパフォーマンスは現在または将来の成果を示唆する信頼できる指標ではありません。指数に直接投資することはできません。
注記:上記の見通しは米ドルベースです。当資料は特定の時点における市場環境の評価を示すものであり、将来の成果の予想あるいは保証を意図したものではありません。当資料中の情報は、特定のファンド、戦略あるいは証券に関する投資アドバイスとして依拠すべきものではありません。

FRBの新しい政策の枠組みを試す

市場は、パンデミック後のFRBの反応関数を理解しようとしています。市場のプライシングとFRB自身の予測との間の断絶は、資産リターンにとって重要な意味を持ちます。

米国の政策金利(予想)に対する市場のプライシング:2021年4月

出所:BII、FRB、データはRefinitiv Datastream、2021年4月。

注記:グラフは、米国2年物オーバーナイトインデックススワップの1年後の水準、これは今後数年間のFRB政策金利のプライシングを示唆している。

テーパー・タントラムの再来ではない

今年の利回り上昇の要因は、2013年のテーパー・タントラムとは大きく異なります。当時は、FFレートのパスが実質金利の上昇を受けて急激に再評価されたことが原因でした。現在は、タームプレミアムの上昇が原因となっています。

米国10年債の変動要因分析: 2013年 vs. 2020-2021年

過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。

出所:BII、FRB、Haver Analytics社のデータ、2021年4月。

予想実質金利、予想インフレ率、タームプレミアム(投資家がリスクの高い長期国債を保有するために通常要求するプレミアム)の過去の市場価格に基づいて、10年米国債利回り上昇の要因を分けて示しています。2013年のテーパー・タントラム期は、バーナンキFRB議長(当時)が債券購入の抑制を打ち出してから数ヶ月間の変化を示しています。2020-2021年の期間は、最初の新型コロナウィルス・ショックで利回りが過去最低水準に達した後の動きを示している。タームプレミアムとは、投資家がより長期間の貸し出しによって得られると期待されるプレミアムをさします。

市場のリーダーシップは急速に変化した

エネルギーや金融などのシクリカル銘柄の上昇が加速する中で、グロースに比べて劣勢が続いていたバリューの急激な形勢逆転は、今年の市場の動きの中でも際立った特徴です。

バリュー株に対するグロース株の相対パフォーマンス、米国10年債利回り:2020-2021年

過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。

出所:BII、データはRefinitiv Datastream、2021年4月。

注記:オレンジ色の線は、MSCIワールド・グロース・トータルリターン指数からMSCIワールド・バリュー指数を引いたものです。黄色の線は米国10年債の利回りを示しています。指数は運用されているものではなく、直接投資することはできません。

執筆者
Jean Boivin
BII ヘッド
Wei Li
BII グローバルチーフ投資ストラテジスト
Elga Bartsch
BII マクロリサーチヘッド
Vivek Paul
BII シニア ポートフォリオ ストラテジスト
Scott Thiel
BII チーフ債券ストラテジスト