2021 Global Outlook
2021 GLOBAL OUTLOOK

A new investment order

投資は新しい時代に突入しました。新型コロナウイルスのパンデミックは、経済・社会の仕組みの大きな変化を加速させました。その変化はサステナビリティ、格差、地政学、マクロ政策などに表れているようです。新しい投資の秩序の下ではポートフォリオ配分の根本的な見直しが求められており、早期に始める必要があると考えています。
投資テーマ
01

ニューノミナル

経済活動の再開が加速する中、今後、景気が回復し、実質利回りが低下すると予想しています。中央銀行は、期待インフレ率が上昇しても名目利回りの上昇を抑えようとすると考えられます。国債をアンダーウェイトとし、実質金利の低下が株式にとって追い風になると考えます。また、低金利の見通しから、リスク選好を維持します。米国の株式を選好し、インカム面でハイイールド債も選好します。

02

グローバル化の再構築

新型コロナウイルスは、米中二極化の世界秩序や世界のサプライチェーンの再構築といった地政学的変化を加速させ、サプライチェーンは効率よりも耐性が重視されるようになりました。慎重な国・地域分散を推奨し、ベンチマークを上回る中国の資産のエクスポージャーを選好します。また、日本を除くアジアを中心に新興国の資産を選好する一方、欧州と日本についてはアンダーウェイトとします。

03

急加速する構造転換

パンデミックは、サステナビリティ重視、国内や国家間の格差拡大、従来から実店舗型小売店に対するeコマースの優位など既存の構造的なトレンドを加速させています。社会のサステナビリティ重視の流れの中でサステナブル資産を選好します。また、バーベル型アプローチを取り、テクノロジー、ヘルスケア、一部のシクリカル銘柄を選好します。

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これまでの方法は通用しない

従来のビジネスの進め方は新型コロナウィルスのパンデミックには通用しませんでした。新型コロナウイルスのもたらすショックは、大規模な自然災害によるものと似ています。ブラックロックはコロナ危機の初期の段階で、金融市場にとって最も重要な問題である経済的損害の最終的な累計は世界金融危機(GFC)直後の数分の一程度にとどまるだろうと評価していました。

これは、収入が激減したビジネスや世帯を救うためにしっかりとした政策支援がある場合、という条件付きの見方でした。新型コロナウイルス・ワクチンの治験の結果を受けて、ブラックロックは自らのフレームワークに対する信頼を一段と強めています。積み上がった需要が顕在化することで、2021年の経済の再スタートには大きなはずみが付くとみられます。市場は、経済の先行きに対する透明性が上がったことを受け、全面的な経済再開を急速に織り込むことになるでしょう。

再スタートの課題

米国と欧州は短期的な課題を抱えています。ウイルス感染者数の再拡大は経済活動の明確な縮小を引き起こす可能性があります。米国では主要な政策面での支援が打ち切られようとしており、息切れリスクが高まっています。永久的な経済の痛みをもたらすような出来事を防ぐためにも、政策面での支援の継続が欠かせません。一方で、ワクチン開発の進展はゲームチェンジャーとなっていて、それが将来に向けた架け橋となり、政策担当者、企業、市場は、ポスト・コロナへの移行に確信を持てるようになっています。

ポートフォリオ全体の耐性

そのため、ブラックロックは短期的な市場の不安定化の先を見据えたいと考えています。戦術的な観点から株式の見通しを引き上げて全体的なリスク選好度を高め、セクター別のアプローチを取ります。パンデミックにより現在、経済や社会に変容を促す動きが生じていることから、テクノロジーとヘルスケア銘柄を選好します。同時に、新興国(EM)株式や米国小型株のように経済の再スタートで特に恩恵を受ける可能性のある銘柄にも注目します。アジアでは新型コロナウイルスに対する対応が成果を上げていることから、アジア(除く日本)株式とアジア債券をオーバーウェイトとし、中国の経済成長の影響を受ける資産を選好します。

インフレ率上昇局面での名目金利の上昇は抑えられるとブラックロックはみており、政策の変革はブラックロックの戦略的見通しに大きく影響しています。各国中央銀行は、インフレ率が上昇しても名目利回りの上昇を抑え込むことに傾注しているとみられ、投資家はこの状況に対応するために新しい戦略が必要になるでしょう。ブラックロックは、国債をアンダーウェイトとし、通常のインフレ上昇期よりも株式への戦略的配分を高めに維持します。サステナブル資産への構造的なシフトは数十年にわたって起きるとみており、サステナビリティはブラックロックが示す見解の基軸となっています。これまでのコンセンサスとは異なり、サステナビリティを基軸とした投資はリターンの向上につながるとブラックロックは考えています。プライベート市場でのエクスポージャーは、サステナビリティの観点からポートフォリオの耐性を高める方法の1つです。

2021 Outlook レポートを読む(PDF)

以下の「各資産の見通し(米ドル建て)」は、米国人投資家などおもに米ドル建てで投資を行う投資家のための見通しとしてブラックロック・グループが作成したものであり、本邦投資家など日本円建てで投資を行う投資家の皆様を対象とした見通しではありません。当該見通しは米ドル建て投資家による各資産の見通しの一例として、あくまでご参考情報としてご紹介することを目的とするものであり、特定の金融商品取引の勧誘を目的とするものではなく、また本邦投資家の皆様の知識、経験、リスク許容度、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的等を勘案したものではありません。記載内容はブラックロック及び弊社が信頼できると判断した資料・データ等により作成しましたが、その正確性および完全性について保証するものではありません。各種情報は過去のもの又は見通しであり、今後の運用成果を保証するものではなく、本情報を利用したことによって生じた損失等についてブラックロック及び弊社はその責任を負うものではありません。記載内容の市況や見通しは作成日現在のブラックロックの見解であり、今後の経済動向や市場環境の変化、あるいは金融取引手法の多様化に伴う変化に対応し予告なく変更される可能性があります。またブラックロックの見解、あるいはブラックロックが設定・運用するファンドにおける投資判断と必ずしも一致するものではありません。

市場見通し

幅広い資産クラスに関する戦略的(長期)ならびに戦術的(6~12カ月)見通し:2020年12月

資産 戦略的見通し 戦術的見通し
株式 Strategic equities - neutral Tactical view - neutral
バリュエーションの上昇、利益、配当性向面での厳しさを考慮し、戦略的ホライズンでは株式の見通しを中立とします。新興国株式を選好します。戦術的には株式の見通しをオーバーウェイトに引き上げます。経済活動再開の動きにはずみがつく一方、低金利が続くとみられるためです。クオリティ銘柄と一部の景気敏感株への投資のバランスに配慮したバーベル・アプローチを提唱します。
クレジット Strategic equities - neutral Tactical view - neutral
戦略的観点から、クレジットの見通しを中立とします。投資適格債のスプレッドがデフォルト・リスクの増大に見合うだけの対価を提供しないとみているからです。インカム収入に着目し、引き続きハイイールド債を選好します。戦術的なホライズンでは、イールド・スプレッドの縮小や一部の緊急クレジット支援の段階的な縮小といった環境でも、経済の再スタートや現行の政策対応ががクレジットのパフォーマンスを支えるとみています。
国債 Strategic equities - neutral Tactical view - neutral
国債を保有する戦略上の根拠がかなり薄らいでいます。利回りが想定の下限に近づいているためです。株式相場の急落に対する安定化手段としての国債の機能が、低金利下で弱まっています。物価連動債を選考します。中期的なインフレ高進のリスクを想定しているからです。戦術的スタンスでは、デュレーションを中立に据え置きます。金融緩和策による金利上昇の抑制がその理由です。
キャッシュ Tactical view - neutral Tactical view - neutral
キャッシュの見通しを中立とし、オーバーウェイトとした株式とクレジットへの投資に活用します。一定のキャッシュ保有は有効と考えています。サプライ面でのショックで株式と債券がともに下落した際の緩衝材になるからです。
プライベート市場 Strategic equities - neutral Tactical view - neutral
プライベート・クレジットを含む非伝統的な資産のリターンの源泉には価値を向上させる可能性や分散化効果があります。中立の見通しは、大半の適格投資家が保有しているよりも大幅に高い配分をベースとしています。機関投資家の多くは流動性リスクを過大視し、プライベート市場への投資を過度に抑えているとみられます。プライベート市場は複雑な資産クラスであり、すべての投資家に適した投資対象ではありません。

注記:上記の見通しは米ドルベースです。2020年12月時点。当資料は特定の時点における市場環境の評価を示すものであり、将来の出来事の予想または将来の成果の保証を意図したものではありません。読者は当資料中の情報を、特定のファンド、戦略あるいは証券に関するリサーチまたは投資アドバイスとして依拠すべきではありません。

各資産の戦術的見通し

各資産クラスの6~12カ月の戦術的見通しと確信の度合いに基づく世界の資産クラス全体に対する見方:2020年12月

Legend Granular
株式

資産 戦術的見通し
米国 United States
米国株式の見通しをオーバーウェイトに引き上げます。テクノロジーやヘルスケアなどのセクターが構造的な成長トレンドへのエクスポージャーを提供し、米国小型株は2021年に予想される景気サイクルの拡大局面入りの恩恵を享受できる位置付けにあると考えます。
欧州
Europe
欧州株式の見通しをアンダーウェイトに引き下げます。同市場は低金利の圧力を受けている金融セクターのエクスポージャーが相対的に高い側面があります。ワクチン主導の経済復興でこれまでの後れを取り戻すことができたとしても、構造的な成長課題を抱えています。
日本
Japan
日本株式の見通しをアンダーウェイトとします。他のアジア諸国の方が米バイデン政権下での通商政策をめぐる予測可能性の高まりに伴う恩恵が大きいかもしれません。米ドル安が円高をもたらし、日本の輸出企業の重しになる可能性もあります。
新興国 Emerging markets
新興国株式の見通しをオーバーウェイトとします。ワクチン普及に伴う2021年の世界経済拡大の恩恵が最も大きいとみられます。米ドルが横ばいまたは下落と予想されることやバイデン政権下でのより安定した通商政策などもポジティブな要因です。
日本を除くアジア Asia ex-Japan
日本を除いたアジア株式の見通しをオーバーウェイトとします。多くのアジア諸国は新型コロナウイルスを効果的に封じ込め、経済活動の再スタートで先行しています。テクノロジーへの傾斜で構造的な成長トレンドの恩恵を受けることも可能とみています。
モメンタム Momentum
モメンタムファクターの見通しを中立に維持します。同ファクターは短期的に課題に直面するとみられます。新型コロナウイルス感染の再拡大や財政政策による支援息切れのリスクが市場の変動をもたらす可能性があります。
バリュー
Value
バリューファクターの見通しを中立とします。同ファクターは、経済活動再開の加速に伴う恩恵を受ける可能性がありますが、セクターにかかわらずきわめて割安な水準に放置された銘柄の多くは、パンデミックによって悪化し続けている構造的な難題に直面するとみられます。
ミニマム・ボラティリティ Minimum volatility
ミニマム・ボラティリティのファクターの見通しをアンダーウェイトとします。今後6~12カ月にわたって景気サイクルが上向くと想定していますが、そうした環境下でアンダーパフォームする傾向があります。
クオリティ
Quality
クオリティファクターの見通しをオーバーウェイトとします。構造的な追い風を受けているテクノロジー企業を選好します。健全なバランスシートとキャッシュフロー創出力を有する企業には、パンデミックや経済のさまざまな状況への耐性が備わっているとています。
サイズ
Size
米国のサイズファクターの見通しをオーバーウェイトとします。米国の小型株と中型株はワクチン普及に伴う経済回復の恩恵を受ける景気敏感のエクスポージャーを取ることができる主要な資産という位置付けです。

債券

資産 戦術的見通し
米国債 United States
米国債の見通しをアンダーウェイトとします。同国の名目金利は一定のレンジで推移する見込みですが、期待インフレ率の上昇に伴い実質金利は低下するとみられます。こうした想定に基づき、国債よりも物価連動債を選好します。
米物価連動国債
Europe
物価連動債の見通しをオーバーウェイトとします。構造的な金融緩和策や生産コストの上昇を背景に、期待インフレ率上昇の可能性が次第に織り込まれるとみられます。
ドイツ国債
Japan
ドイツ国債の見通しを中立とします。ユーロ圏の景気回復が減速の兆候を示す中、欧州中央銀行による追加的金融緩和を好感し、リスクが後退するとみています。
ユーロ圏周縁国債 Emerging markets
ユーロ圏周縁国の国債の見通しについては、最近のアウトパフォームにかかわらずオーバーウェイトとします。欧州中央銀行の量的金融緩和の拡大やその他の政策対応で、金利はさらに低下する見込みです。
グローバル投資適格債 Asia ex-Japan
投資適格債券の見通しをアンダーウェイトに引き下げます。イールド・スプレッドがさらに縮小する余地はほとんどないとみており、ハイイールド債やアジア債券といった景気敏感の資産への投資をより選好します。
グローバル・ハイイールド債 Momentum
グローバル・ハイイールド債のオーバーウェイトを一段階引き下げます。スプレッドは大幅に縮小しましたが、同資産クラスは低金利の環境で依然、魅力的なインカムの源泉と考えています。
新興国債券(ドル建て)
Value
ドル建て新興国債券の見通しを中立に引き上げます。ワクチン普及に伴う世界の経済活動の再スタートや米国の通商政策をめぐる予測可能性の高まりが下支えするとみられます。
新興国債券(現地通貨建て) Minimum volatility
現地通貨建て新興国債券の見通しを中立に引き上げます。リスク資産の回復には後れを取っていますが、それを取り戻す余地があるとみられます。緩和的な世界各国の金融政策や米ドルの安定ないし軟調ぎみな展開も新興国の資産を下支えする材料になるとみられます。
アジア債券
Quality
アジア債券の見通しをオーバーウェイトとします。バリュエーションは魅力的な水準です。アジア諸国は新型コロナウイルスの封じ込めで大きな成果を上げており、経済活動再開で先行しています。

過去のパフォーマンスは現在または将来の成果を示唆する信頼できる指標ではありません。指数に直接投資することはできません。
注記:当資料は特定の時点における市場環境の評価を示すものであり、将来の成果の予想あるいは保証を意図したものではありません。当資料中の情報は、特定のファンド、戦略あるいは証券に関する投資アドバイスとして依拠すべきものではありません。

インフレ率の上昇に備える

中期的なインフレはブラックロックの見通しの中核をなすものですが、過去とは非常に異なる影響をもたらすとみています。

「ニューノミナル」とは、今後5年間にインフレ率が上昇するという単純な予想ではありません。ニューノミナル(名目)とは、短期的に経済が安定成長し、最終的にインフレ率が上昇するものの、債券の名目金利が通常のように上昇しない状態を意味します。そのため、市場への影響はこれまでと大きく異なると考えられます。これまでのインフレ率上昇局面では投資家は高いコストを強いられ、また、金利が上昇するため、割引率が上昇することで多くの資産クラスでバリュエーションが下押しされました。しかし、今回の政策の変革により、現時点の水準からのインフレ率の上昇は、リスク資産にこれまでのような悪影響は及ぼさないとブラックロックはみています。

3つの大きな力が作用している

脱グローバル化と分断

将来の予想は実現しない場合があります。出所:BlackRock Investment Institute、米連邦準備理事会。Refinitiv Datastreamのデータを使用。2020年11月時点。注記:グラフは、今後5年間に関して市場が織り込んでいる予想平均インフレ率を示しています。そ算出のために5年先5年インフレ率スワップを使用しています。これは、5年後から5年間にわたるインフレ率に対する市場予想の指標です。グラフ内の折れ線は5年間先行させています。オレンジ色と緑色の点は、同じ5年間(2025~2030年)についての米国のPIとユーロ圏のインフレ率の平均に対するブラックロックの現在の予想を示しています。ユーロ圏は19の全加盟国を指します。

脱グローバル化と分断

生産能力の削減、脱グローバル化、分断による生産コストの上昇がグローバルに進む段階にあります。

FRBの政策の枠組み

中央銀行は、インフレ目標を達成するために政策の枠組みを根本的に見直しています。

政治的圧力

新型コロナウイルスショックへの必要な対応としての財政・金融政策の変革により、中央政府がインフレを抑えるために持っている能力に政治的制約がかかるリスクをもたらしている。

各国の中央銀行は、これまでのインフレ率目標未達が続いていた状況を補うために政策のフレームワークを見直し、インフレ率が目標を上回るまで経済の過熱を許容する姿勢を強める意思を示しています。一方、財政・金融政策の変革はコロナショックへの対応として必要なものですが、インフレを防止する中央銀行の能力に対して政治的制約を強めるリスクを伴います。中央銀行は名目金利の上昇を抑制することで、金融環境が期せずして悪化する事態を回避するとみられます。

インフレ率が上昇する理由は他にもあると考えています。世界のサプライチェーンの再編成により、生産コストは上昇する流れにありますが、企業が利益率を確保するために価格交渉力を行使する余地があると考えられます。短期的には、企業の費用削減措置によってインフレ圧力は軽減される可能性があります。しかし、低いインフレ率がすでに10年にわたって続いたため、ブラックロックがベースシナリオで予想するインフレ率の小幅上昇(年間2.5~3%程度)だけでも市場は大きく反応すると思われます。(「過小評価されているインフレ・リスク」参照)。

Quotation start

これほど利回りが低い中で、固定付き国債が過去にもっていたような安定化機能は期待できないと考えます。

Quotation end
Vivek Paul Senior Portfolio Strategist, BlackRock Investment Institute

先進国(DM)国債のポートフォリオにおける役割には疑問符がつくようになっています。利回りが実質的な下限近くにあって、景気が上向く中でも中央銀行が利回りの上昇を押さえようとする状況では、先進国国債がもたらす分散効果は低いと考えます。実質利回りは低下傾向を示しており、これがブラックロックが戦略的に物価連動債を選好している理由の1つとなっています。特に、名目(ノミナル)利回りが抑制される「ニューノミナル」という状況が今後リスク資産を下支えするとブラックロックは考えています。そのためブラックロックは戦術的にリスク選好度を高め、高いインフレ率が名目利回りに対して影響を及ぼしていた時期と比べて、株式に対する戦略的配分を高く維持します。

執筆者
Philipp Hildebrand
ブラックロック副会長
Jean Boivin
BIIヘッド
Elga Bartsch
BIIマクロリサーチヘッド
Mike Pyle
BIIチーフインベストメントストラテジスト
Scott Thiel
BIIチーフ債券ストラテジスト