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この数年、米国におけるハリケーンや山火事、欧州の熱波、日本の洪水と異常気象現象が相次いで発生し、気候関連リスクに注目が集まっています。ブラックロックにはこうしたリスクがポートフォリオに与える影響を測定する新しい手法があります。
※物理的リスクとは、気候変動が企業の事業や経済活動に影響を与えるリスクをさします。
経済への打撃をマッピングする
「気候対策を講じない」シナリオの下で予想される米国各地域のGDPに対する経済的影響(2060~2080年)
出所:ブラックロック・インベストメント・インスティテュート、ロジウム・グループのデータを使用。2019年3月現在。
注:上の地図は「気候対策を講じない」シナリオの下で2060~2080年に予想される米国都市地域のGDPに対する影響を示している。気候変動は1980年を基準として測定されている。当分析には、犯罪率、死亡率、労働生産性、冷暖房の需要、バルク商品作物の農業生産性、沿岸暴風雨による年間の予想損失の変化による影響が含まれている。またこの分析は、これらの変数の相関と経年変化を考慮に入れている。ただし、移住や内陸の洪水などの測定が困難な幾つかの変数は考慮に入れていない。手法の詳細については、ロジウム・グループによる2019年3月の論文「Clear, Present and Underpriced: The Physical Risksof Climate Change(明白で現在存在しているが価格に十分に織り込まれてない:気候変動の物理的リスク)」を参照。ブラックロックの推計であり、この通りにならない可能性がある。
現代の気候科学とデータ・サイエンスの進歩により、今では、現在および将来の様々な気候シナリオによって、資産に対する直接的な物理的リスクを地域別に評価できるようになりました。さらに、エネルギー需要、労働生産性、経済活動への影響など、連鎖する影響の予測も可能になりました。
上の地図は「気候対策を講じない」シナリオの下で2060~2080年に予想される米国都市地域のGDPに対する影響を示しています。最も大きな損害を被る可能性が高いのは、メキシコ湾岸地域、南大西洋沿岸、アリゾナ州の大部分です(下図の赤色の部分を参照)。一部の寒冷な州では、GDPが小幅ながらも押し上げられる可能性があります。しかしリスクは非対称的です。米国の大都市地域の約58%でGDPが最大で1%以上減少する可能性がある一方、同程度の幅のGDP増加を経験する可能性がある地域は1%未満と推計されます。
膨らむ負担
地方債指数のうち、気候関連のGDP損失リスクに晒されている割合(2020~2100年)
出所:ブラックロック・インベストメント・インスティテュート、ロジウム・グループのデータを使用。2019年3月現在。
注:地方債市場を表すためにS&P National Municipal Bond Indexを使用している。上図は、「気候対策を講じない」シナリオの下で、2100年までに様々な大きさのGDP損失リスクに晒されると予想される地方債市場の割合(市場価値ベース)を示す。例えば、2060~2080年までに、地方債指数の現在の構成で考えた場合、市場価値ベースで約20%が気候変動によるGDPの平均年間損失率が3%以上に上る地域になる。妥当なリスク・シナリオとして、損失が高確率で起きうる66%レンジの上限を使用している。
気候変動リスクは地域の経済に脅威となることが予想されます。ブラックロックの分析は、米国大都市統計地域(MSA)のうち、気候に関連するリスクの加速に直面する地域の割合が今後数十年間にわたって増え続けることを示しています。この分析では、「気候対策を講じない」シナリオの下での最終的な経済的影響(気候変動による影響を受けなかったと想定した場合のGDPの水準との比較で表す)の可能性を、383ある米国MSAの地域別に調査しています。この影響には、直接的な影響(ハリケーンの被害による予想損失など)と二次的な影響(死亡率、労働生産性、エネルギー需要、農作物の生産量の変化など)が含まれます。
今後10年で、S&P NationalMunicipalBondIndexの15%以上(時価)が、平均年間経済損失額がGDPの0.5%~1.0%を上回るMSAによって発行されることになるとみられます(上図「膨らむ負担」を参照)。このことは、MSAの信用力と気候変動対策プロジェクトのための資金拠出に大きな影響を及ぼすとみられます。
暴風雨の天候
カテゴリー4および5のハリケーンへのエクスポージャーの変化(1980年との比較)
出所:ブラックロック・インベストメント・インスティテュート、ロジウム・グループのデータを使用。2019年3月現在。
注:上図は、CMBS市場(ブラックロックのCMBSデータベースに含まれる約6万件の商業用不動産で表される)におけるハリケーンへのエクスポージャーの中央値を示す。棒グラフは、カテゴリー4および5のハリケーンの風が不動産に影響を及ぼす確率の中央値が、1980年比でどれだけ変化するかの推定値を「気候対策を講じない」および「何らかの気候対策を講じる」の両シナリオの下で表している。「現在」は、2010~2030年の推定である。ハリケーンの風速の評価には、サファ・シンプソン・ウィンド・スケール(カテゴリー1~5)を用いた。風速場は、LICRICE風速場モデルを使用してロジウムによって推定された。詳細は、S. HsiangとA. Jinaによる「The Causal Effect of Environmental Catastrophe on Long-Run Economic Growth: Evidence From 6,700 Cyclones(環境災害の長期的経済成長への因果的影響:6,700個のサイクロンによる証拠)」(NBERワーキングペーパー、2014年7月)を参照。
気候に関連するリスクは、CMBSの保有者にとってますます大きな懸念材料となっています。建物、小売用不動産、宿泊施設などのCMBSローンの原資産は、数十年間にわたり存続し、長期的に増加が見込まれる気候リスクの影響に晒されています。ロジウム・グループのモデルにブラックロック独自のCMBSデータベースに含まれる約6万件の商業用不動産を適用しました。このような不動産がカテゴリー4または5のハリケーンに見舞われる確率の中央値は、1980年以来、137%上昇したことが分かりました。30年以内に、カテゴリー5のハリケーンに見舞われる確率は「気候対策を講じない」シナリオの下で275%上昇すると予想されます。
各発電所のリスクの大きさ
米国の発電所のブラックロック気候変動リスク・エクスポージャー・スコア(2019年)
出所:ブラックロック・インベストメント・インスティテュート。ロジウム・グループ、ベリスク・メープルクロフトおよび米エネルギー省のデータを使用。2019年時点。
注:上図は、米国の発電所の位置を示しており、ブラックロックが行った気候変動リスク・エクスポージャーの評価に従って色分けされている。例示のみを目的としたものである。リスクには標準偏差を用いている。−3のスコア(気候変動リスクが高い)は、調査対象の発電所のリスク・エクスポージャーの平均と比べてリスク・エクスポージャーが3標準偏差高いことを表している。
異常気象事象は、電力会社の株価に織り込まれていないと考えています。ブラックロックは、気候変動リスクを可視化するため、全発電所の物理的リスクの平均を算出することで各電力会社の気候変動リスクのトータル・スコアを算出しています。
MKTGH0819A-881981