リキッド・オルタナティブとは
主なポイント
元本割れのリスクがあります。投資資産の評価額やインカムは増加することも減少することもあり、保証されているものではありません。投資家は当初の投資金額を回収できない可能性があります。
・リキッド・オルタナティブは、多くの場合、ヘッジファンドに類似した投資アプローチを日次流動性を備えた投資ビークルに組み込むことで、差別化されたリターン源泉を活用する機会を広げます。
・ロング・ショート戦略などの手法を用いることで、伝統的なロングオンリーの株式や債券ポートフォリオを超えて投資の選択肢を広げ、市場全体との相関を引き下げることを目指します。
・市場全体の方向性への依存度を低下させることで、リキッド・オルタナティブは従来のポートフォリオ配分を補完し、分散効果とリスク調整後リターンを高める可能性があります。
・導入を成功させるには、実効的な分散効果一貫したパフォーマンス、顧客のポートフォリオ目標との整合性を実証してきた戦略を優先することが重要です。
リキッド・オルタナティブとは何か
リキッド・オルタナティブは、ヘッジファンドで一般的に用いられる投資アプローチを採用し、投資信託や上場投資信託(ETF)など、アクセスしやすく、多くの場合、日次流動性を備えた投資ビークルを通じて提供されます。主として上場証券に投資する点で、プライベート市場に重点を置くオルタナティブ投資とは異なります。
リキッド・オルタナティブへの関心は、2008年の世界金融危機後に急速に高まりました。世界金融危機によって、透明性、流動性、リスク管理の重要性が改めて認識されたためです。差別化された低相関のリターン源泉の役割にも一段と注目が集まりましたが、このようなリターン源泉は、過去には主として機関投資家向けのヘッジファンドのストラクチャーを通じて利用されてきたものです。運用会社はその後、ヘッジファンドで一般的に利用されてきたこのような戦略を、幅広い投資家が利用可能な投資ビークルで提供するようになり、広範囲の投資家が利用できるようになっています。
ポートフォリオにおいて、リキッド・オルタナティブは通常、分散効果や想定されるリスク調整後リターンを高めるために用いられます。市場全体の方向性との連動性が低い差別化されたリターン源泉を対象とするため、リキッド・オルタナティブは伝統的な株式や債券、さらには他のオルタナティブ投資に対しても、低い相関を示す可能性があります。
リキッド・オルタナティブの仕組み
リキッド・オルタナティブでは、伝統的な株式戦略や債券戦略よりも幅広い投資手法を活用します。
多くのリキッド・オルタナティブで一般的に用いられるアプローチの1つが、ロングとショートの両方のポジションを取ることです。運用会社は、アウトパフォームすると予想する証券(相対的に高いパフォーマンスが期待される証券)をロングで保有する一方、アンダーパフォームすると予想する証券(相対的に低いパフォーマンスが予想される証券)についてショート・ポジションを構築できます。この柔軟性によって投資機会が広がり、相対的なパフォーマンス格差を見極めることでリターンを生み出せる一方、市場全体の方向性(いわゆるベータ)への依存度は低下します。
こうした相対的なパフォーマンス格差、すなわち市場内や市場間におけるパフォーマンスの格差は、ディスパージョン(リターンのばらつき)と呼ばれます。ディスパージョンが大きい市場環境では、相対価値戦略やアクティブ戦略がリターンを追求できる機会が生まれる可能性があります。
以下の図表に示すとおり、マクロ経済や政策の不確実性が高まる時期にディスパージョンは拡大しています。この傾向は以下のようにミクロ、マクロの双方で明確に見られます。ミクロ・レベルではパフォーマンスの上位銘柄と下位銘柄の格差が広がり、マクロ・レベルでは経済と政策の方向性が異なる中で各国株式市場のリターン格差が広がりました。ディスパージョンの拡大は、相対的なパフォーマンス格差を活用できる戦略にとって、好ましい環境だと考えられます。
図表1:市場内や市場間でディスパージョンが拡大しています

出所:ブラックロック、2025年12月31日現在のファクトセットのデータを使用。銘柄間の年間のディスパージョンは、MSCI ACWI指数のパフォーマンス上位半分(中央値以上)の銘柄のネット・トータルリターンの平均から、下位半分の銘柄の平均を差し引いて算出しています。株式銘柄間のディスパージョンのグラフは、各期間における年間のディスパージョンの平均を示しています。各国間の年間のディスパージョンは、最もパフォーマンスの高い国から最もパフォーマンスの低い国を差し引いて算出しています。各国間のディスパージョンのグラフは、各期間のパフォーマンス格差の平均を示しています。指数のリターンは例示のみを目的としています。指数のパフォーマンスには、運用報酬と経費は反映されていません。指数は運用されておらず、指数に直接投資することはできません。過去のパフォーマンスは、将来のパフォーマンスを保証するものではありません。
オプション、先渡し、先物、スワップなどのデリバティブは、リキッド・オルタナティブで頻繁に用いられるもう1つの投資手段であり、これにより運用会社は、株式、金利、クレジット、通貨、コモディティといった資産クラスにわたって投資見通しに基づくポジションを構築できます。
デリバティブは、投資資金の一部のみを用いてエクスポージャーを構築できるため、市場エクスポージャーを取得するための資本効率の高い手段ともなります。残りの資産は、多くの場合、米国財務省短期証券(T-Bill)などの短期金融商品に投資されます。その結果、ファンドのパフォーマンスには、アクティブなポジションから生じるリターンに加え、短期金融資産から得られる利息も反映されます。デリバティブは投資見通しをポジションに反映させる際の柔軟性と効率性を高めますが、後で説明するように、追加的なリスクも伴います。
リキッド・オルタナティブの種類
リキッド・オルタナティブには、以下のように多様な市場動向やリターン源泉を対象とする幅広い戦略が含まれます。
1. 株式ロング・ショート:市場に対してある程度のネット・ロングのポジションを維持しつつ、銘柄選定を通じたリターンの創出を目指します。
2. 株式市場ニュートラル:市場エクスポージャーをほぼゼロに保つように組み合わせたロングとショートの株式銘柄選定戦略を採用します。
3. グローバル・マクロ:国、資産クラス、セクターにわたる相対価値および方向性を捉えた投資機会の獲得を目指します。
4. マルチストラテジー:1つのポートフォリオ内で複数のオルタナティブ戦略に投資し、補完的で分散効果をもたらすリターン要因を組み合わせます。
5. マネージド・フューチャーズ:トレンドフォローの手法を採用し、価格が持続的なトレンドを示す期間にリターンを獲得することを目指します。
6. イベントドリブン:合併、買収、事業再編などのコーポレート・アクションから利益を得ることを目指します。
7. レラティブ・バリュー・アービトラージ:ネットの市場エクスポージャーを低く抑えつつ、相互に関連する証券の価格の非効率性から利益を得ることを目指します。
8. デジタル資産:ブロックチェーンベースの資産と関連戦略へのエクスポージャーを提供し、伝統的な市場と比べて差別化されたリターンを目指します。
これらの戦略は、個別に活用することも、分散されたオルタナティブ資産配分の中で組み合わせて活用することも可能です。リキッド・オルタナティブは、独自の投資機会にアクセスするため、他のポートフォリオ配分との相関や相互間の相関が低くなる可能性があります。このように幅広い戦略が存在し、それに応じて運用成果も多様となるため、投資家は自身の投資目的に合致するファンドを選択することが極めて重要です。
ポートフォリオにおけるリキッド・オルタナティブの位置づけ
リキッド・オルタナティブは、ポートフォリオの分散効果を高め、リスク調整後の投資成果の改善を目指すためによく用いられます。ポートフォリオ構築において、この重要性は一層高まっています。株式市場の集中度が高まり、債券の安定化機能も低下する中で、伝統的な株式と債券への資産配分による従来の分散効果が弱まっているからです。
以下に示すとおり、リキッド・オルタナティブへの配分を追加することで、様々なリスク特性においてポートフォリオのリスクが低下し、リターンが高まる可能性があります。いずれの場合も、その資金は主として債券配分の引き下げによって賄われ、株式への配分も小幅に引き下げています。それに伴い、保守型、中立型、積極型のポートフォリオでリターン源泉の分散が高まっています。
図表2:リキッド・オルタナティブへの配分はポートフォリオの投資成果を改善する可能性があります

出所:ブラックロック、2025年12月31日現在のモーニングスター・ダイレクトのデータを使用。分散は利益を保証するものではなく、元本の損失から保護されない場合があります。株式はiシェアーズ・コアS&P 500 ETF(IVV)で、債券はiシェアーズ・コア米国債券総合ETF(AGG)で表しています。オルタナティブへの配分では、ブラックロックTactical Opportunities Fund機関投資家向けクラス(PBAIX)、iシェアーズSystematic Alternatives Active ETF(IALT)、Global Equity Market Neutral Fund機関投資家向けクラス(BDMIX)、Systematic Multi-Strategy Fund機関投資家向けクラス(BIMBX)に5%ずつ配分しています。指数のパフォーマンスは例示のみを目的としています。過去のパフォーマンスは、将来のパフォーマンスを保証または示唆するものではありません。投資リターンと元本価値は変動する可能性があり、償還時の投資家の受益証券の価値は取得原価を上回る場合も下回る場合もあります。すべてのリターンは、配当とキャピタルゲインの再投資を前提としています。現在のパフォーマンスは、ここに示されたものを下回っている可能性も上回っている可能性もあります。月末時点の直近のパフォーマンスについては、blackrock.comをご参照ください。
ウェルス・マネジメントの投資家がリキッド・オルタナティブ戦略において注目すべき点
リキッド・オルタナティブには複数の戦略カテゴリーがあり、同様の運用方針を持つ戦略の間でも、運用成果は大きく異なる場合があります。リキッド・オルタナティブを評価する際、ウェルス・マネジメントの投資家は、その分散効果の可能性と、リターン特性の長期的な一貫性の両方を考慮する必要があります。
その戦略は現在のポートフォリオに十分な分散効果をもたらすか? まず有効なのは、その戦略の過去の値動きを既に保有している主要な資産クラス(株式、債券、プライベート市場など)と比較することです。
考慮すべき重要な特性の1つは、これらのエクスポージャーとの相関です。相関が低いほど、ポートフォリオ全体を補完する差別化されたリターン特性を有している可能性があります。また、その戦略のベータ、すなわち市場全体の動きに対する感応度を評価することも重要であり、ベータが低いほど、市場変動に対する感応度が低いことを示します。
相関とベータはいずれも、その戦略が市場の方向性に連動しにくいように設計されているか、または連動するように設計されているかによって変わってきます。重要なことは、こうしたエクスポージャーのポートフォリオの中での役割を理解し、既存のリスクを増幅するのではなく、補完するものとなるようにすることです。
その戦略は長期にわたり持続的かつ一貫したリターンを提供してきたか? 長期的な資産配分先として、リキッド・オルタナティブは、ボラティリティを相対的に抑えながら、様々な市場環境においてリターンを生み出すことを目指します。上昇相場と下落相場の両方におけるパフォーマンスを評価することは、リターン特性の安定性を判断する助けとなります。
シャープ・レシオなどの指標は、戦略が取ったリスクに対してどの程度効率的にリターンを獲得してきたかを判断する上で役立ちます。シャープ・レシオは、リスクフリー・レートを上回る超過リターンを、そのリターンのボラティリティで除したものと定義され、数値が高いほど、取ったリスクに対してより高いリターンを獲得していることを示します。さらに、アップサイド・キャプチャー・レシオとダウンサイド・キャプチャー・レシオは、異なる市場環境において、その戦略がどのようなパフォーマンスを示してきたかを把握する手掛かりとなります。上昇局面で市場上昇の恩恵を一定程度享受しながら下落局面で市場下落の影響を限定的にとどめた戦略は、そのリターンが主として市場全体へのエクスポージャーによるものではなく、差別化された投資判断によって生み出されている可能性があります。
以下の図表は、リキッド・オルタナティブ戦略におけるリターンと相関の範囲を示しており、類似したカテゴリー内でも運用成果が大きく異なる場合があることを示しています。このことは、単にカテゴリーに資産配分するだけでなく、ポートフォリオの目的に合致して既存のエクスポージャーを補完する戦略を選定する必要性を裏付けています。
図表3:ポートフォリオのレジリエンスを高める可能性を持つリキッド・オルタナティブの特定

出所:モーニングスター、2025年12月31日現在。上記の統計値は、モーニングスターのマルチストラテジー、マクロ・トレーディング、株式市場ニュートラルの各カテゴリーの平均値です。過去のパフォーマンスは、将来のパフォーマンスを保証または示唆するものではありません。
リキッド・オルタナティブのリスク
リキッド・オルタナティブは、すべての投資と同様にリスクを伴います。運用成果は戦略によって異なり、市場動向、ショート・ポジション、デリバティブの利用によって影響を受ける場合があります。多くの場合、リキッド・オルタナティブは分散効果を高めるために利用されますが、損失が生じる場面も考えられ、分散投資だけで投資リスクを排除できるわけではありません。リキッド・オルタナティブには複数の戦略カテゴリーがあり、同様の運用方針を持つ戦略の間でも運用成果が大きく異なる場合があるため、徹底したデューデリジェンスと慎重なファンド選定が極めて重要です。
さらに、デリバティブを組み入れるリキッド・オルタナティブ戦略には、レバレッジや市場変動に対する感応度など、追加的な検討事項やリスクが伴います。場合によっては損失が当初投資額を上回る可能性があり、投資先の金融商品の流動性も市場環境によって変化する可能性があります。