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LETTER TO CEO 2018

A Sense of Purpose

2018年1月12日

ブラックロックは今年、設立30周年を迎えます。この機会に、昨今投資家が直面している喫緊の課題と、ブラックロックがお客様により多くの貢献するためにこうした課題にいかに対応すべきかについて考えました。当社のお客様の多くは、退職後の生活資金など将来に備えて長期的な投資を行っておられます。そうしたお客様の資産をお預かりしていることは当社の誇りであり、同時に、重大な責務であると実感しています。当社のお客様の長期的な目標の達成に不可欠な、持続的かつ長期的な成長を実現するために、フィデュシャリー(受託者)としてブラックロックは企業との対話を行っています。

昨年、株式市場は極めて堅調に推移し、数多くのセクターにおいて史上最高値を記録しました。その一方で、将来に対する人々の失望感や不安もかつてない水準に高まっています。今まさに世界は高水準のリターンとそれに背中合わせで堆積する不安、というパラドックスを目の当たりしています。世界金融危機以降、資本を有する者は膨大な利益を手にしています。他方、世界の多くの人々は低金利、賃金の停滞、不十分な年金制度、といった問題を抱えています。多くの人々は、貯蓄をするための経済力、リソース、手段を持ち合わせていません。また投資を行っている人々も、過度に現金を保有しているケースが多く見られます。雇用が不安定化しつつある従業員を筆頭に、何百万人もの人々にとって、安定した退職後の生活は益々遠い世界の話となりつつあります。こうした現象が、世界中に蔓延する不安や両極化の主な素地となっているのではないでしょうか。

また、退職後の備えやインフラ整備不足といった課題から、自動化の進展とそれに伴う従業員の再教育に至るまで、多くの政府が将来への備えを怠っている状態にあります。その結果、民間セクターへの期待が高まり、より多くの社会的な課題への対応が企業に求められるようになっています。実際、貴社に対する人々の期待はかつてないほど高まっていると言えるでしょう。上場、非上場を問わず、企業には社会的な責務を果たすことが求められています。企業が継続的に発展していくためには、すべての企業は、優れた業績のみならず、社会にいかに貢献していくかを示さなければなりません。企業が株主、従業員、顧客、地域社会を含め、すべてのステークホルダーに恩恵をもたらす存在であることが、社会からの要請として高まっているのです。

上場企業、非上場企業のいずれも、確固たる理念を持たなければ、持てる力を十分発揮することができず、主要なステークホルダーから、その存続自体を問われることになるでしょう。短期的な利益分配圧力に屈すれば、長期的な成長に不可欠な従業員の能力開発、技術革新への投資、設備投資等を犠牲にすることになります。こうした企業は、極めて短期で近視眼的でありながらも明確な目標を提起するアクティビストの標的となるでしょう。その先に見えるのは、退職後の生活、住宅購入あるいは高等教育のための資金に充てようと投資をした人々に、十分なリターンを返せないという結果です。

新たなコーポレートガバナンス・モデル

投資家が世界的にインデックスファンドを積極的に活用するようになるにつれて、ブラックロックのフィデュシャリー(受託者)としての責務も変容し、コーポレートガバナンスの範疇が拡大しています。1.7 兆ドルを運用する当社のアクティブファンドでは、戦略や長期的な成長に疑いがある場合は、その企業の株式を売却すればよいのですが、インデックスファンドの運用に際しては、その企業がベンチマークとなる指数の採用銘柄である限り、株式の売却により不支持の意思を表明することはできません。そのため、企業と対話し、議決権行使により当社の責務を遂行することがかつてないほどに重要になっています。インデックス投資家はこの点において、企業が成長、繁栄するための「忍耐強い資本」を提供する究極の長期投資家と言えるでしょう。

企業の責務が重くなると同時に、運用会社の責任も増しています。当社は、ブラックロックに資産を預けてくださるお客様、すなわち皆様の会社の真の所有者のために、企業と積極的な関わりを持つ存在でなければならないと考えています。その責務は、年次株主総会における議決権行使にとどまりません。長期的な価値創出のために時間やリソースを割くことが不可欠です。

株主と企業が相互理解を深める新しい関係を模索すべき時が来ています。以前、私は企業経営者の皆様への書簡において、企業は四半期の業績を重視し過ぎているのではないかと指摘したことがあります。同様に、私は株主との関わりにおいて、年次株主総会と議決権行使の議題に集中し過ぎていると感じています。建設的かつ生産的な対話を目指し、共に株主の利益を実現するのであれば、委任状争奪戦に時間とお金を浪費するのではなく、長期的な価値の向上に向けて対話を通年で継続的に行うべきです。

ブラックロックは、こうした変革を促進するという当社の責務を認識し、実践しています。過去数年間に亘り、ブラックロックはスチュワードシップ・グローバルヘッドのミシェル・エドキンスの下、当社のアプローチを進化させることに注力してきました。2011年以降、当社は、議決権行使を重視するアプローチから、企業との対話に重きを置くアプローチへと移行しています。

昨今のインデックス型投資の拡大に伴い、こうしたアプローチを新たな段階へと発展させることが求められています。スチュワードシップの重要性が増していることを踏まえ、当社はこのほど、ブラックロックの共同創業者で副会長のバーバラ・ノヴィクに当社のスチュワードシップ活動全体を監督することを要請しました。スチュワードシップ・チームの実務は引き続きエドキンスが指揮します。また、ブラックロックは今後3年でスチュワードシップ・チームを2倍の規模に拡充する予定です。チームの強化を通して一段と生産的で密な対話を頻繁に行う枠組みを確立することで、貴社との対話がますます意義深いものとなると考えています。

貴社の戦略、取締役会、企業理念

株主との対話を生産的なものにするには、企業は長期的な成長を実現するための経営戦略を説明できなければなりません。繰り返しのお願いになりますが、長期的な価値創造に向けた経営戦略を公に説明していただくとともに、それが取締役会の議論を経たことを明示していただきたいと思います。これにより、取締役会が会社の戦略的な方針を承認したことが投資家に示されます。さらに、取締役の皆様にお会いする際には、取締役会においてどのように経営戦略を監督しているのか、そのプロセスをご説明いただくことを期待します。

長期戦略は、企業行動や方針、潜在的な課題への備え、短期的な経営判断等を理解するうえで極めて重要な情報です。貴社の戦略は、目標とする業績の達成に至る道程を明確に示すものであるべきです。しかしながら、優れた業績を維持するためには、貴社事業の社会的なインパクトのほか、賃金上昇率の低さ、自動化の進展、気候変動など、幅広い社会の構造変化が企業の成長に与えうる影響を理解する必要があります。

こうした戦略に関する説明は不変であるべきものではなく、むしろ事業環境に応じて変化するものであり、投資家の問題意識を明確に捉えたものであるべきでしょう。市場は経営戦略に関する複雑な議論よりも四半期決算報告書や対立構造にある株主総会に興味を示すかもしれません。しかし、アクティビストの台頭や無益な議決権争奪戦の最大の理由は、企業が長期的な経営戦略について十分に説明してこなかったことが背景にあるのではないでしょうか。

例えば米国では、大幅な税制改正が自社の長期的な戦略にどのような意味を持つか、各企業が投資家に説明すべきでしょう。税制改革により増加する税引後キャッシュフローをどのように活用するのか、そしてそれが長期的な価値創造にどのように生かされるのか。企業にとって、今はまさに長期的な事業計画を投資家に説明すべき重要な時期です。今後、税制改革を機に増加したキャッシュフローの使途について、短期的な成果を重視するアクティビストが積極的に活動し、企業に回答を迫ることが予想されます。事業計画の策定や説明を行っていない企業は、こうした要請を退けることが難しくなります。米国の税制改革はほんの一例にすぎません。どの国の企業であっても、法制度や規制の大幅な見直しが次年度のバランスシートだけでなく、長期的な成長戦略にどのような影響を及ぼすか、株主に説明することが求められるでしょう。

アクティビストを批判する向きも多いですが、彼らが有益な提案を行う場合もあります。その際には、ブラックロックなどの株主と対話の機会を持ち、重要なステークホルダーを議論に巻き込むことが肝要でしょう。委任状の勧誘が開始されるまで様子をみたり、長期的な戦略を説得力のある形で示すことを怠ったりしてしまうと、有意義な対話を行う機会をみすみす逃してしまいます。

取締役会が長期戦略の策定に積極的に関与しており、長期的なアプローチを採用しているという事実は、株主のための長期的な価値を創造する企業の力を示す重要な指標です。当社は、企業と株主との親密な対話を望むと同時に、取締役が企業の長期戦略に深く関与することを求めます。取締役会は常時開催されるわけではありませんが、その責務自体が途切れることはありません。定期的に開催される取締役会での情報のみに頼っている取締役は、株主に対する義務を果たしているとは言えません。同様に、取締役会を疎んじる経営幹部は、自らを害するだけではなく、会社の長期的な成長を損なうことになるでしょう。

また、当社は引き続き、取締役会の多様性が重要であると申し上げたいと考えています。性別、民族、職務経験、考え方などの観点で多様性に富む人により構成されている取締役会は、多様で敏感な考え方を持つことができるでしょう。そのような取締役会では、集団的に一つの思考に偏ったり、環境変化に由来するビジネスモデルへの新たな脅威の兆候を見逃したりすることも少なくなると考えられます。さらに、長期的な成長の促進につながる機会をより的確に見出すことができるようになるのではないでしょうか。

さらに、取締役会は、企業理念を説明し、実践するだけではなく、投資家や消費者、地域コミュニティにとって重要性が増しているさまざまな問題への対応という点でも、欠くことのできない存在です。現在、こうしたステークホルダーは、企業が広範な課題に対してリーダーシップを発揮することを求めています。こうしたステークホルダーの姿勢は、正論です。環境・社会・ガバナンス問題への企業の取り組みは、持続的な成長に不可欠なリーダーシップと優れたガバナンスを示します。当社が投資プロセスにおいてこうした要素をより一層加味しようとしているのもそのためです。

企業は自らに問いかけるべきです。地域社会における役割とは何か。自社の事業が環境に与える影響をきちんと管理できているか。多様性に富んだ組織を実現するための努力はしているか。技術革新への適応はできているか。自動化が益々進む中、従業員の再教育や新たな事業機会を追求しているか。従業員が退職後の生活に備えて投資を実践するにあたり必要な、従業員のファイナンスに関する教育やサポート等を提供できているのか。

2018年、ブラックロックは長期的な価値創造に関する議論に加わり、貴社のすべてのステークホルダーに資するより良い枠組みの構築に向けて積極的に取り組んでいきたいと考えています。この書簡を通じて、貴社の株主である当社のお客様は、投資リターンだけでなく、世界の繁栄と安定に寄与するリーダーシップと明確さを貴社が示されることを望んでいます。当社は、こうした問題について企業経営者の皆様と積極的に対話していきたいと強く願っています。

ブラックロック・インク
会長兼最高経営責任者(CEO)
ラリー・フィンク

Larry Fink
Chairman and Chief Executive Officer

MKTGH1019A-969298


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