脱炭素社会の実現に向けて:フィデューシャリーとしてのアプローチ

Two silhoetted people sit in front of a circular doorway, looking at green trees

昨年、ブラックロックは皆様にお送りした書簡で、サステナビリティを投資の新たな基軸とすることをお伝えしました。その際、お客様の運用成績を向上させるために、リスク管理、アルファの創出、ポートフォリオの構築、スチュワードシップ活動に、いかにサステナビリティを組み入れているかをご説明しました。こうした取り組みは、私たちに深く根差す強い確信、すなわちサステナビリティのインテグレーションにより、投資家の皆様がより耐性のあるポートフォリオを構築し、より優れた長期的なリスク調整後リターンを達成することができるという確信に基づいています。

2020年には、弊社はアクティブ及び運用助言を行うすべてのポートフォリオにおいてESGをインテグレートする目標を達成しました。また、気候データと分析のための新たなスタンダードを設けるべく、Aladdin Climateというサービスを開始しました。インベストメント・スチュワードシップ活動においては、サステナビリティの重要課題への重点的な対応を一段と強化しました。さらに、投資家に対してより幅広いサステナブル投資の選択肢を提供するために、100本近く新たなファンドを設定しました。2020年における取り組みの概要については、こちらをご覧ください。

昨年1月に皆様に書簡をお送りしてからほどなくして、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が世界で猛威を振るい、これまでに甚大な人的及び経済的被害をもたらしており、現在も深刻な状況が続いています。市場は急落し、多くの観測筋はパンデミックにより気候変動への世界的な対応が遅れると予想しました。しかしながら、それとは全く逆のことが起こりました。パンデミックを機に、弊社会長兼CEOのラリー・フィンクが投資先企業のCEO宛ての年次書簡で指摘したように、社会全体がこのかねてからの問題をより真剣に受け止めざるを得なくなりました。

実際、2020年は企業、各国政府、投資家が気候変動への同様なコミットメントを示したという点で、歴史的な年となりました。「ネットゼロ」を達成するという考えがこの中核にありますが、これは地球の温暖化を2度より十分に低く抑えるために必要とされる科学的に立証された目標値であり、2050年までに二酸化炭素の排出量を大気中から除去可能な水準以下に抑える経済の構築を目指すものです。

昨年は、中国、EU、日本、韓国といった主要国がネットゼロの公約を表明し、先日は米国がパリ協定への復帰を表明しました。ますます多くの国や地域の金融監督当局が気候リスクに関する情報開示を義務付けるようになっており、中央銀行は気候リスクに関するストレステストを実施し、政策立案者は国・地域を越えて気候に関する共通の目標達成に向けて協働しています。世界の排出量の60%強を占める127カ国・地域の政府と1,100社を超える企業がこれまでにネットゼロの公約をすでに掲げているか、もしくは検討中です。

こうした変化は、投資家に劇的な影響を及ぼします。昨年弊社は、投資家が気候リスクは投資リスクであるとこれまで以上に認識するようになっており、これが大規模な資本の再配分につながると指摘しました。同時に、脱炭素社会へ世界が移行していくことにより、これまでにない投資機会を生み出していくことにもなると考えます。世界がネットゼロに移行するなかで、ブラックロックはお客様がその最前線に立つことをお手伝いすることにより、最善のサービスを提供できると考えます。

 


ブラックロックのネットゼロに向けた取り組み

ブラックロックは、2050年、もしくはそれ以前に温室効果ガス排出量をネットゼロに抑える目標の達成を支援することに注力します。投資家の皆様がネットゼロへの移行により生じる機会の獲得を含め、ネットゼロ社会に沿ったポートフォリオの構築をサポートするために、さまざまな施策を講じます。2021年の主要な施策は以下の通りです。

計測と透明性

  • 十分に信頼できるデータが存在する市場については、弊社のETFと公募株式・債券ファンドにおいて温暖化水準指標を公表
  • 十分に信頼できるデータが存在する市場については、現時点でネットゼロ達成と整合的になっている運用資産残高の割合、及び2030年時点でのネットゼロ達成と整合する同割合の中間目標を公表
  • Aladdin Climateを通じ、運用ポートフォリオにおけるネットゼロへの移行の道筋を確認できるようにすることで、より多くの投資家が気候関連目標の管理と達成を実現できるよう支援すると同時に、より強固で標準化された気候データと指標を推進することで業界に貢献

資産運用

  • ブラックロックのポートフォリオ構築の基礎となっている資本市場予測(Capital Market Assumptions: CMA)に気候変動による影響を統合
  • アクティブ・ポートフォリオにおいて、重大な気候リスクを有する銘柄を管理するためのフレームワークとして新たな「精査モデル」を導入
  • 電気自動車からクリーンエネルギー、高エネルギー効率住宅まで、エネルギー転換により生じる機会からお客様が恩恵を享受するための支援
  • ネットゼロ達成への経路に整合する商品など、気温に関する明示的な目標を持った運用商品の導入

スチュワードシップ活動

  • 弊社のお客様の投資先企業が、気候変動リスクの緩和とネットゼロへの移行がもたらす機会の収益化に取り組んでいることを、スチュワードシップ活動を通じて確認
  • 2050年までに温室効果ガス排出量のネットゼロを達成し、地球の気温上昇を2℃よりも十分に低く抑える目標に整合する事業計画の開示を投資先企業に要請
  • 弊社のスチュワードシップ活動において、サステナビリティに関する株主提案への議決権行使をさらに重視

 


地殻変動的な変化が加速

昨年弊社は、世界規模の地殻変動的な変化、すなわちサステナブル資産への大規模な資本の再配分が近い将来に起きるであろうとご説明しました。実際に、この変化が起こり始めた2020年1月から11月までに、世界の投資信託やETFの投資家は、前年同期比で96%増となる2,880億米ドルの資金をサステナブル投資商品へ振り向けました1

このサステナブル資産へのシフトの加速は、データの改善、投資選択肢の拡大、サステナビリティがリターンの持続的なドライバーになるとのコンセンサスの高まりなど、さまざまな要因を反映しています。こうしたことがサステナブルな企業への世界的な資本の再配分を加速させており、この動きは今後も長年にわたって続くことが予想されます。そして、資本の再配分に早い段階で加わる投資家がその恩恵を享受することになるでしょう。

2020年には、代表的なグローバルのサステナブル投資指数のうち、81%がベンチマークとなる親指数をアウトパフォームしました2。このアウトパフォーマンスは1-3月期の市場下落時に特に顕著で、過去の下落局面で見られたサステナブル投資ファンドの耐性が改めて確認された形となりました3。 投資リターンは期間によって変動するものですが、昨年の例は、サステナブル投資はリターンを犠牲にするとの誤解を解くことにつながると思われます。

サステナブル投資に対する新たな理解と、ネットゼロに向かう世界的なモメンタムは、今後数十年間にわたり、経済が劇的に姿を変えていくことを示唆しています。こうした変革は、弊社のお客様である投資家の皆様にも極めて大きな影響を及ぼすことになると思われます。弊社は、データ、ツール、運用戦略および知見の提供を通じて、この移行に対応するお客様をサポートする最善のパートナーでありたいと考えています。本書簡は気候関連の施策に焦点をあてていますが、弊社は引き続きサステナビリティ問題全般について全方位的に体制を強化するよう努めてまいります。

1 出所: Simfund、 Broadridge、GBI。 2020年11月時点のデータ。クローズド・エンドのファンド、ファンド・オブ・ファンズは対象外。マネー・マーケット・ファンドを含む。
2 出所:BlackRock。2020年12月時点。例示のみを目的とする。広く分析対象となっている世界的な32種類のサステナブル投資指数とそれと同等の非サステナブル投資指数を対象としている。これらの指数は運用対象ではなく、例示のみを目的に用いたもので、いかなるファンドのパフォーマンスも示唆するものではない。指数に直接投資することはできない。
3 出所: BlackRock。コロナ危機下の2020年1-3月期にサステナブル投資指数の94%がアウトパフォームした。

ブラックロックのネットゼロに向けた行動

現在は世界経済自体のカーボンインテンシティ(炭素集約度)が高いため、さまざまな投資家のポートフォリオは、ブラックロックのお客様全体のポートフォリオも含め、炭素集約度の高いものとなっています。これを一朝一夕に変えることは不可能であり、またブラックロック全体のポートフォリオもお客様の投資判断の影響を受けます。しかしながら、ネットゼロ経済に向けたグローバルな動きは力強く、ブラックロックはお客様がその移行の最前線に立つことにより、最善のサービスを提供できると考えます。お客様の目標達成を手助けするための弊社の行動は、大きく次の3点(計測と透明性、資産運用、インベストメント・スチュワードシップ)に集約されます。

計測と透明性

弊社は昨年、投資家を対象にサステナブル投資に関する意識調査を実施し、その運用資産残高は総額25兆米ドルに達しました。それによると、サステナブル投資への資金配分を増やす意向を示す投資家が大半でしたが、同時に、その際の制約になり得る唯一最大の要因として、質の高いデータの不足が指摘されました。投資家は、エネルギー転換への自身のポートフォリオの対応を判断するための優れたデータと計測を必要としています。

温暖化水準指標とネットゼロ情報の開示目標
投資家がエネルギー転換に対する自身のポートフォリオの対応状況を判断し、ネットゼロに向けた考えに沿って資産配分を行うためには、自身のポートフォリオが辿るべき移行経路を理解する必要があります。

ブラックロックは現在、運用残高が2兆米ドルを超えるiシェアーズETFとブラックロックが提供する投資信託を対象に、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿った炭素集約度を加重平均ベースで公表しています。しかし、既存の炭素集約度指標は、例えば「温暖化水準」を示す指標のように、ポートフォリオが世界的なネットゼロへの移行にどの程度対応しているかを判断することのできる全体像を提供するものではありません。

温暖化水準指標は、ポートフォリオの保有資産と平仄の合った世界の気温変化を測定する指標です。温暖化水準を計測するための手法は、新たな研究や特定のセクター及び地域に関するデータを背景に、常に進化しています。ブラックロックは、同業他社やTCFDなどのパートナーと共に、この問題に関する議論に深く関与し、その採用を積極的に推進してきました。

この情報開示そのもの、そして投資家がそれを基に投資対象の脱炭素化がどのような経路を辿るかを理解することは、資産配分に関する意思決定においてますます重要な役割を果たすようになると考えられます。弊社のお客様にこの重要な情報を提供するとともに、世界の気候変動の現在の見通しに関する公的なデータを入手しやすくするために、十分に信頼できるデータが存在するあらゆる市場に関して、2021年末までに次の情報開示を行うことを目指します。また、ネットゼロとの整合性を測定する以下のような手法は進化し続けると予想されます。

  • ETFと公募の株式・債券ファンドのすべてにおいて温暖化水準指標を公表
  • 指数プロバイダーとの連携により主要な市場指数の温暖化水準指標を公表
  • 現時点でネットゼロ達成と整合する運用資産残高の割合を公表
  • 2030年時点でネットゼロ達成と整合する運用資産残高の割合に関する中間目標の発表

Aladdin Climate
温暖化水準及び気候リスクをより容易に算出し把握するために、投資家はより優れたツールとテクノロジーを必要としています。この課題を解決するために、弊社はAladdin Climateの開発を進めています。これにより、業界をリードするリスク管理と資産運用のためのプラットフォームであるAladdinに、様々な気候データを取り込み、リスクを測定する機能が加わります。弊社はAladdin Climateの開発を通じて、より多くの投資家が異常気象のような物理的リスクや、政策の変更、テクノロジー、エネルギー供給の変化に伴う移行リスクがポートフォリオに与えるインパクトを測定できるようにすることで、気候目標の達成を支援します。投資家は最終的に、個別証券及びポートフォリオのレベルにおいて、気候リスク調整後の資産価値を算出し、ネットゼロに向けたポートフォリオへの移行経路を確認することで、気候リスクと機会をより明確に特定することができるようになるでしょう。弊社の目標は、Aladdin Climateを通じて、気候科学からポートフォリオのリターンを導くためのデータ、気候リスクモデル及びプロセスに関するスタンダードを設定することです。

資産運用

運用プラットフォームとリスク管理ツールの改善のため、弊社はさまざまな対策を講じています。弊社がとるあらゆる施策は、気候に関する知見をベースに経済的なリターンを確保できるよう、綿密な調査を経て実践されます。

気候変動による影響をブラックロックの資本市場予測(CMA)に組み入れ
現在、気候変動が経済成長の見通しと期待リターンに及ぼす影響を織り込んだ経済予測はほとんどありません。このため、将来の市場の姿を正確に捉えることができていないと弊社では考えています。弊社は今年、自社で算出している長期的な期待リターンとリスクの予測に気候変動の要素を統合することで、資本市場予測(CMA)の向上を図ります。この新たなCMAは、弊社がお客様に代わって構築し、実装するポートフォリオの中核に位置するものです。気候変動による損失を回避することは、経済成長をけん引することにつながり、ひいては投資家により良いリターンをもたらすとの考えが根底にあります。新たなCMAで炭素排出強度などの指標を精査することにより、移行に向けた対応が進む企業やセクター、地域には期待リターン・リスクの改善が見込まれる一方で、対応が不十分だと判断される場合には下方修正が見込まれると考えています。これは投資家に新たな機会をもたらすでしょう。サステナビリティ課題はもはや戦略的な投資決定がなされた後に対応するものではなく、むしろ、投資判断の際に欠くことのできない要素となっています。弊社がこれをポートフォリオの設計プロセスに組み入れるようにしたのも、そのためです。

アクティブ・ポートフォリオにおけるエクスポージャーの管理に「新しい精査モデル」を導入
弊社は、お客様の投資先企業に対して、ネットゼロ経済への世界的な移行に適切に対応することを期待しています。多くの企業はこうした変化に積極的に備えていますが、適切な準備を怠っている企業は、お客様のポートフォリオに対するリスク要因となります。アクティブ運用プロセスにサステナビリティ・リスクの分析を組み込むことを目的とした「新しい精査モデル」の一環として、また、弊社のあらゆるリスク管理ツールを活用する観点から、次の3点に基づき、特に重大な気候関連リスクを有する保有資産から成る「フォーカス・ユニバース」を作成します。

  • 現時点の炭素集約度が高い
  • ネットゼロ移行へ向けた準備の進捗状況が不十分
  • 弊社のスチュワードシップ活動を通じて指摘した懸念事項への対応が不十分

弊社のインデックス・ポートフォリオにおける保有企業のうち、こうした項目に進展が見られない投資先企業、そして特に改善に向けた取り組みと意欲が見受けられない企業に対しては、経営陣に対して議決権を行使するだけでなく、弊社のディスクレション(裁量)で運用を行うアクティブ・ポートフォリオから除外する可能性があります。こうした銘柄は弊社のお客様がリターンを確保するうえでリスクとなると考えるためです。一方、炭素排出の動向、移行への準備、ガバナンスといった点で優れていると考えられる企業は、弊社のお客様に投資機会をもたらすことになるでしょう。

温暖化水準指標及び気候変動に焦点を当てた商品の提供
弊社は、気候変動に対応した総合的な運用サービスをお客様に提供することに取り組みます。2021年には、お客様が自身のネットゼロ目標を達成できるようにするために、明確な温度目標を設定した投資商品を導入する予定です。弊社は、指数プロバイダー、シナリオモデル開発者、気候科学者との積極的な協働により、新たなネットゼロ投資環境の発展を促す考えです。

温暖化の水準に焦点を当てた商品に加えて、時価総額加重指数へのエクスポージャーの代替となり幅広いマーケットをカバーする低炭素移行戦略を立ち上げます。また、弊社はすべての新規サステナブル投資ファンドについて、明確な「気候目標」を設定します。例えば、炭素削減目標やエネルギー転換への対応に優れた発行体を相対的に重視することなどが考えられます。

クライメート・イノベーションの機会
現在、世界経済は化石燃料に大きく依存しています。しかし、ネットゼロ経済への移行に伴い、電力、運輸、工業、建築、農業など、多岐にわたるセクターで大いなる機会が生じています。すでに弊社は再生可能エネルギーにおける世界最大の投資家の一社であり、上場、非上場を問わず、気候分野のイノベーションについて新たな投資機会を絶えず模索しています。さらに、弊社は2021年には再生可能エネルギー分野の運用能力を、風力発電や太陽光発電からより広義の気候インフラへと拡げるほか、フランスとドイツ政府、米国の3つの有力なインパクト投資志向の財団とのクライメート・ファイナンス・パートナーシップを通じて、新興国におけるエネルギー転換を加速させていきます。

お客様の選択肢の拡充
資産運用における弊社のアプローチの原則は、お客様に選択肢を提供することです。投資家がご自身の資産運用をネットゼロ経済に即したものとするよう求めるにつれて、高度にカスタマイズされたポートフォリオを構築する能力がお客様の目標達成に大きく貢献すると考えます。弊社は以前から、機関投資家向けにカスタマイズしたポートフォリオの構築を行っており、この分野で業界をリードする立場にありました。2020年11月に最終合意に達した米国の運用会社アペリオの買収により、従来は大手機関投資家に限定されていたカスタマイズのサービスを、より多くの投資家が利用できるようになります。弊社は、このカスタマイゼーション技術を今後、投資家に広く提供することを目指しています。

さらに、カスタマイゼーションにより投資家はネットゼロだけでなく、社会的、宗教的、その他の価値観にあった志向をポートフォリオに深く組み込むことができるようになります。この機能は、投資家の個人的な選好を形にする、もしくはポジティブなサステナビリティ成果の追求を実現する弊社の既存商品を基盤とします。例えば、スクリーニングを取り入れたETFや、ポジティブなサステナビリティ成果の追求を実現するインパクト投資の商品などです。後者は、社会あるいは環境課題の解決に取り組む企業に投資するもので、例えば手ごろな価格の住宅を提供したり、米国で資本不足に陥っている地域コミュニティの変革を促したりする企業が対象となります。

インベストメント・スチュワードシップ

インベストメント・スチュワードシップは、お客様に対する受託者責任を果たす上で重要な役割を担っています。弊社は、ガバナンスや事業に直結するサステナビリティ課題といった持続的かつ長期的な利益の向上に資すると考えられる課題について投資先企業とエンゲージメントを行います。弊社は、昨年を通じて、サステナビリティ関連リスク、特に気候リスクは投資リスクであるという確信を一層強めており、スチュワードシップ活動においても、サステナビリティに関連する要因が、株主にとってのリターンを生み出す企業の能力にどのような影響を及ぼしているかを一段と重視しています。

弊社はすべての企業に対して、2050年までに温室効果ガス排出量のネットゼロを達成し、地球の 温暖化を2度より十分に低く抑える目標に整合する長期的な事業計画を開示することを要請しています。この情報開示は、低炭素社会に適応した事業への転換と、低炭素社会への移行に伴う新たな価値創造の機会を捉える企業の能力を判断する際に不可欠なものです。

気候リスクに関するエンゲージメントの強化
昨年、弊社のスチュワードシップ・チームは、弊社のお客様の投資先企業のうち炭素集約度の高い440社について重点的にエンゲージメントの強化に取り組みました。これらの企業による温室効果ガス排出量は、お客様の投資先企業全体によるスコープ1及びスコープ2の総排出量のうち約60%を占めています。この440社において、弊社は64名の取締役と69社の企業に対して反対票を投じ、191社を「ウォッチリスト」に追加しました。これら企業については、例えばネットゼロ経済への移行に備えた事業計画を公表するなど、気候関連リスクについてのリスク管理と情報開示をより一層強化しなければ、責任があると考えられる取締役に対して弊社は2021年に反対票を投じる可能性があります。また、現在弊社は前述の重点的に取り組むべき企業のユニバ-スを炭素集約度の高い1,000社以上に拡大しています。これらの企業を含めると、お客様の投資先企業全体のスコープ1及びスコープ2の総排出量の90%強を占めることになります。

株主提案の支持
株主提案に対する議決権行使は、弊社のサステナビリティに関わるスチュワードシップ活動において一段と重要な意味を持つようになっています。株主提案が、企業が対処すべき重要な事業リスク(例:気候リスク)に焦点を当て、リスクに関する当該企業の対応が不十分であると考えられる場合は提案を支持します。また、投資先企業の取り組みをより適切に促すことができると考えられる場合も提案を支持します。長期投資家として、ブラックロックは従来から事業に直結するサステナビリティ課題に関する自身の見解を企業との対話を通じて説明した上で、投資先企業の経営陣が当該課題に対応するための時間的猶予を十分に設けてきました。しかしながら、事業に直結するサステナビリティ課題の多くは速やかな行動を必要とするため、企業側の対応に進展が見られないようであれば、株主提案を支持することもあるでしょう。

こうした株主提案に対する新たなアプローチを通じて、2020年下半期(7月1日以降)には、弊社は環境及び社会関連の提案のうち、長期的な価値につながると判断した54%の提案を支持しました(スチュワードシップ活動についてはこちらをご参照ください)。

明確かつ統一された報告基準
弊社は、ネットゼロに整合する投資の浸透、企業の情報開示負担の軽減、明確かつ一貫性のあるデータに裏付けられた十分な情報に基づく投資判断の促進には、共通言語(タクソノミー)と情報開示に関するフレームワークが統一されることが不可欠であると考えます。弊社は,サステナビリティ情報に関する報告基準の統一化を支持しており、IFRS財団が示しているアプローチに賛同しています。なお,報告基準の統一化が実現するまでは、引き続きTCFDと米国サステナビリティ会計基準審議会(SASB)の提言に沿った情報開示を支持します。

ラリー・フィンク 2021 letter to CEOs
2020年に世界はパンデミックに直面しただけではなく、気候変動がもたらす社会存続の脅威も注視するようになりました。企業や投資家、政府が2050年のネットゼロ達成目標により一層焦点を当てる中で、経済の変化は加速しています。
ラリー・フィンク 2021 letter to CEOs

ブラックロックのコーポレート・イニシアチブ

ブラックロックは、ネットゼロ経済への移行に貢献するために数多くの取り組みを進めています。

    • 透明性への取り組み: 弊社は、お客様が投資先企業に求めるのと同等の透明性基準を自社が達成できるよう努めています。その取り組みの一環として弊社が2020年にTCFD及びSASBの提言にそれぞれ準拠した初の報告書を公表しました。気候リスクと機会を管理する上で必要な弊社の戦略、ガバナンス、リスク管理を説明し、データセンターや従業員の出張を含む業務上のスコープ1、スコープ2、スコープ3の排出量を報告しています。現在、ブラックロックの事業運営はカーボン・ニュートラルです。弊社は、エネルギー効率化戦略を採り、これを達成・維持しています。消費エネルギーの100%を再生可能エネルギーとする目標を達成しているほか、除去できない排出量はオフセットしています。

      2021年には、弊社がお客様に代わって運用するポートフォリオの総排出を、入手可能なデータの範囲でスコープ3の報告に含める計画です。この排出量は引き続き、弊社のお客様の投資判断と世界経済のネットゼロに向けた進捗状況を反映することになりますが、時間の経過とともに、本書簡で明らかにした施策が功を奏して弊社の運用資産における炭素集約度が低下し、ネットゼロに整合的な運用資産の割合が増加するものとみています。
  • 公共政策: 弊社は引き続き、ネットゼロ目標の達成を含め、金融システムをより安定的かつ持続可能で、平等なものとする公共政策を提唱します。 例えば、弊社は投資家が透明性と信頼をもって投資判断を行えるよう、サステナブル投資商品における「共通言語(タクソノミー)」の確立を支持します。弊社はまた、取引において市場参加者に信頼される明確な基準とデータに裏付けされたグローバルなカーボン・オフセット市場の確立を求めます。カーボン・オフセットは排出削減に代わるものではありませんが、効率的なオフセット市場はネットゼロへの移行に際し、企業にとって重要なツールの一つになると考えます。さらに、弊社は脆弱な地域コミュニティの負担を最小にとどめ、経済成長を支えるような仕組みを持った世界的なカーボンプライシング制度の導入を支持します。

まとめ

ブラックロックは、公正かつ公平なネットゼロへの移行という世界的な目標の達成に取り組んでいます。ネットゼロへの移行は世界経済に変革をもたらすことになるため、投資家にとって大きな機会が生じることになるでしょう。弊社は、お客様がこうした移行を乗り切り、成果を享受できるよう、ソリューションやツール、データの提供に注力しています。弊社の活動にご質問があるお客様、ならびにお客様に代わり弊社が運用している資産への影響を把握するため、ポートフォリオの分析を希望されるお客様は、弊社の営業担当者までご遠慮なくお問い合わせください。皆様のご愛顧に深く感謝いたします。

ブラックロック・グローバル・エグゼクティブ・コミッティ